役員が毎朝交代で「挨拶当番」

挨拶はコミュニケーションの基本です。

私も早朝にウオーキングに出かけたときは、近所の人と会うたびに「おはようございます」と挨拶します。そこから簡単な会話を交わす人もいれば、無視して通り過ぎる人もいます。このようなちょっとした振る舞いに、その人の人となりが出るものです。

無印良品では、店舗だけでなく、本部でも「挨拶の習慣」を徹底しています。

社内では毎月の目標を決め、掲示板やエレベーターホールに貼り出しますが、挨拶の強化を月間目標にすることもあります。そのときは、私を含めた役員が毎朝交代で「挨拶当番」としてエレベーターホールに立ち、出勤してくる社員たちに率先して挨拶をしていました。

さらに、部門長に五段階の挨拶のチェック表を渡し、毎日の終礼時に達成できたかどうかを、部下に自己申告してもらいました。

部門長が一方的に評価するのではなく、自己申告にしたのは、社員に「やらされ感」を持たせたくないからです。「やらされ感」の強い仕事は身につきません。ガチガチに縛って「やらせる」のは得策ではないと考えました。

リーダーが率先して行動しているか

なぜ、いまさら「挨拶」の話なのか、疑問に思う読者もいるかもしれませんが、それはチームの信頼関係に影響するためです。

優秀な人材を集めたのに、結果をなかなか出せないチームがあったとしましょう。

そのチームの根本的な問題は、「能力」ではありません。社員同士のコミュニケーションや、信頼関係の希薄さが不振要因になっている場合が大半です。そのような状態では、どんな改善策を講じても、勝てるチームにはなりません。

部下に訓示を垂れるよりも、朝の「おはようございます」、退社するときの「お疲れさまでした」のたった一言を徹底する。これだけでも、信頼関係は築けるものです。

一流の企業、一流のチームをつくり上げるには、毎日の小さなこと、たとえば挨拶などを徹底して実行するしかありません。それも、部下に指示するだけではなく、まずはリーダーが率先して行動することが大事です。

「挨拶は大事」「今どきの若者は礼儀を知らない」と日頃から言っている人ほど、自分から挨拶をしない例は珍しくありません。私は、挨拶をするのに年齢も立場も関係ないと考えているので、エレベーターホールに立って挨拶をしていました。

何事も、自分から実行しないとまわりは動いてくれません。まわりは意外と小さなこともしっかりと見ています。部下は自分の姿を映す鏡です。部下が動いてくれないのなら、自分自身に問題があるのだと考えたほうが問題解決の早道になるでしょう。