運転の知見もなければ基幹部品の風車も海外製品に頼らなくてはならない、というのが今の日本の実態だ。海外勢が圧倒的な競争優位性を持っている。日本で洋上風力市場が生まれ、急速な拡大が見込まれながら日本に有力なプレーヤーがいないのだ。
ちなみに太陽光の分野でも同じ現象が起きている。これから脱炭素目標に向かって太陽光も導入・拡大が目される中、日本の太陽光パネルメーカーは続々生産撤退を発表している寂しい状況にある。
外資参入を止められない仕組み
二つ目に、現状では洋上風力について外資参入を規制する制度設計になっていない点だ。
国内の洋上風力は長崎県五島市沖合や千葉県銚子市沖で商用運転されている事例を除き導入実績はなく、海外の成功事例を輸入する以外に根付かせる方法がない。日本の洋上風力は、外資を規制する手段すら講じられない段階にあると言っていい。
これが、政府が「切り札」と持ち上げる洋上風力の状況なのだ。政府もこの点は割り切っており、「これまでの国内の風車メーカー撤退等の経緯を総括し、海外企業との連携や国内外の投資を呼び込むような」政策が必要であると認めている。
この結末は、先行した太陽光発電を見れば明らかだ。日本の太陽光発電市場に多くの外資の参入を許すことになった。当時の太陽光より海外と力量差がある洋上風力は、規制なくば、外資の参入は太陽光との比では済まないだろう。
実際、すでに外資は日本市場に入ってきている。先ほど洋上風力の世界上位企業として挙げたオーステッドは日本の洋上風力開発に参画済みだ。RWEも日本法人を設立し、関西電力との提携を発表するなど着々と準備を進めている。また、首脳レベルで圧力をかけてきたイギリスは、この11月に電力大手SSEが日本の洋上風力会社の株式を8割取得し、日本市場に進出する姿勢を鮮明に打ち出している。
日本は非常に「おいしい市場」
三つ目の理由は、太陽光導入時と同様に、洋上風力でも政府が電力を一定額で買い取る制度(固定価格買取制度)の適用が想定されている点だ。
買取価格は1kWhあたり20円台後半以上になる見込みだ。太陽光の11円と比較すればどれだけインセンティブが設けられているかが分かる。確実に事業者が儲かる価格設定にしないと参入が期待できないからだ。
さらに日本という信頼できる国の政府保証が付く。20年という長期保証のビジネスモデルであり、外資からすればこれ以上予見性をもって稼げる場はない。