警察幹部になっていく人の“ある共通点”
幹部になっていく人を見ていると、共通しているのは正義感と短気。私もそうだけれど、みんな短気ですよ。
ただ、刑事に関しては短気ではだめだと言うんですよ。例えば刑事養成講習の推薦状に「短気」と書いてあると、「これ、短気だからダメだ」って断られることがある。
講評を書く人にお願いして、「短気だけはやめてください。正義感が強いとか、長所だけを書いてほしい」と。警察官になる人って正義感が強い。そして正義感が強い人って、大体、短気なんです。
だから、どうやって短気を抑えるか。みんな苦労してましたね。昔は「短気を克服するために釣りをやる」人が何人もいました。
短気は少しでも直さないとダメですよ。張り込みに向かないとかいうわけじゃなくて、役所で仕事をしていたら、短気ではやっていけない。思いがけないことはよく起きるし、思うように行かないこともある。そのたびに怒っていたって、解決しませんからね。警察幹部になるには短気であっても、それをうまくコントロールしていくことが必要です。
長官とナンバー2の次長が同じ情報を共有している
野田元総監に限らず、これまで調べたことを考え合わせていくと、警察の人事はほかの官庁とは違い、組織が堅牢だ。
特徴1 政治家は長官になれない
政治家がトップにならないことで、選挙違反、贈収賄事件への介入を許さない組織になっている。検察の場合、法務大臣の指揮権発動があるけれど、警察にはそれがない。
特徴2 警察庁次長は副大統領
警察庁の次長には長官と同じ情報が上げられている。長官は大きな判断は次長と相談して決める。警察庁における次長は長官の下僚ではあるが、同程度の判断ができる立場にいる國松孝次元長官は自らが撃たれて、意識を取り戻した時、次長を呼んで長官の後任人事を進めるよう頼んだ。それは、次長ならいつでも長官の職務をまっとうできるとわかっていたからだ。
一方、他の省庁の事務次官には次長という職はない。たいていは審議官や官房長だ。だが、事務次官に上がる情報と官房長が握っている情報の質と量は違う。警察庁は次長という役職を作っているから、長官不在であっても、組織は機能する。
警察の場合、襲撃されたり、狙撃される危険があるから、そういう組織になっているのだろうが、これは戦後、警察庁ができた時からの知恵だと言える。
警察庁における次長の役割は大きい。