子どもに受けるよう細部の表現を今風に

08年、カラー液晶を搭載した「たまごっちプラスカラー」が発売される。これ以降のシリーズは「カラー期」と呼ばれ、現在まで継続的に新機種が発売されている。

たまごっちプラスカラー
写真提供=バンダイ
たまごっちプラスカラー ©BANDAI

そして、25周年となる21年11月23日、「Tamagotchi Smart(たまごっちスマート)」が発売される。これはたまごっちとして初のウェアラブルタイプだ。

Tamagotchi-Smart(たまごっちスマート)
写真提供=バンダイ
Tamagotchi Smart(たまごっちスマート) ©BANDAI

「初代のたまごっちも企画当初は腕時計型でした。それが実現しなかったのは、コストの問題や腕につけた時にかさばってしまうからです」

スマートウォッチや活動量計の普及により、シリコンバンドの製造コストが安くなったこと、さらには電源を乾電池から薄型の充電式電池にすることで、かさばりが抑えられたのも、ウェアラブル型にできた理由だという。たまごっちの名前は「たまご+ウォッチ」が由来。発売から25年目にして、その名の通りの形状となったわけだ。また、タッチパネルも初めて採用された。

「子どもたちがタッチパネルに慣れるか懸念もありましたが、難なく操作できることがわかった。日本の子どもたちは、スマートフォンのような大人の持ち物への憧れが強く、大人が操作するような機能でもすぐに慣れてしまう。さらには、細部の表現や演出を時代に合わせることも大事です」

例えば、お買い物のシーンにも表れている。昔のたまごっちではお店に行って買い物をしていたが、最新機種ではデリバリーで運ばれてくる。また、マッチングアプリを模した『たまっちんぐアプリ』やスマートスピーカーを模した『スマスピっち』など、今どきのアイテムを積極的に取り込んでる。

海外向けの機種は「シンプルでわかりやすく」

片や、懐かしさから手に取る大人のユーザーにとって重要なのは、「変えない」こと。現在、大人の購入者が多いのは、一回り小さな「たまごっちnanoシリーズ」で、こちらはクラシックなモノクロ液晶を残している。『呪術廻戦』や、『スター・ウォーズ』、『PUI PUIモルカー』、『新世紀エヴァンゲリオン』などとのコラボレーションで展開し、それらのファンからも人気だ。

きめつたまごっち たんじろうっちカラー
写真提供=バンダイ
きめつたまごっち たんじろうっちカラー
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

大人に懐かしいと思ってもらえるラインアップと、今の子どもに受けるラインアップをきっちり考えながら展開していることがわかる。一方、同じ子ども向けでも、海外で販売する製品では考え方が異なる。

「かつては日本と同じ仕様のたまごっちを海外で販売しましたが、遊びの内容が複雑すぎると感じる子どもが多く、南米や欧州では販売が伸び悩んだ。以降、海外向けのたまごっちはシンプルでわかりやすい仕様を心がけています」

例えば、今年北米で発売した「Tamagotchi Pix」には、カメラが搭載されている。それだけ聞けば多機能に感じられるが、ワイヤレス接続や赤外線通信は排除されている。遊び方としては、カメラ撮影や撮った写真の色から料理を作るといったシンプルなものだ。料理のような、時代や地域性に関わらない普遍的な要素を遊びの主軸にしている点が、積極的に流行を取り入れる日本の機種との大きな違いだ。

ただ、将来的には日本と海外の共通モデルを発売したいと桃井常務は話す。

Tamagotchi-Pix
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Tamagotchi Pix ©BANDAI