ブームが終わって60億円の損失
急速なブームほど収束も早い。98年の後半、たまごっちは突然売れなくなる。ブームを受けて増産計画を進めていたことで、バンダイは99年度に約60億円の損失を計上する。定価1980円のたまごっち300万個以上分の損害である。
「あまりに足りない足りないと言われたので、勢いよく増産してしまった。いくつもの生産メーカーに声をかけて、全てを足してみたら途方もない数になることが判明した。あの頃はまだバブルの記憶が残っていて、この夢はいつまでも続くんじゃないかと思ってしまったのだと思います」
バンダイはこの大きな痛みから、予測して生産する重要性を学んだ。たまごっちに限らず、売れている玩具をソフトランディングさせるのは難しく、在庫を残して負けてしまうことが少なくない。販売店などの現場を観察し、売れ行きを予測しながら生産計画に反映させるようになった。さらに現在は、環境負荷の点でも廃棄が生じないような生産計画が求められるようになった。
「8年周期の法則」で復活する
社会的にも死んだと思われたたまごっちだが、2004年3月に「かえってきた!たまごっちプラス」として復活する。赤外線通信機能を搭載し、他の人のたまごっちと友達になったり、恋愛結婚をして2世を誕生させたりできるようになった。この通信機能は、後に携帯電話にも対応する。バンダイでは、この04~07年に発売された機種を「ツーしん期」と呼んでいる。なぜ、手痛い損失を出したにもかかわらず復活させたのか。
「玩具業界の流行は、8年くらいの周期で回っている感覚があります。ブレイクした後に人気がなくなると、その後1~2年ぐらいは終わったものと思われますが、8年ぐらいたつとターゲットの世代が変わって、また売れる環境が戻ってくるのです。ですから我々は、常にブームから今何年目かを意識し、予兆をキャッチするようにしています。たまごっちの場合は、03年ぐらいに、中高生が昔のたまごっちを引っ張り出して遊んでいるという話を耳にするようになった。市場が温まってきたねと、準備を始めました」
たまごっちの新シリーズ発売にあたっては、以前のブームを知らない新しいお客さんに遊んでもらった方がフレッシュに感じてもらえるだろうと、メインのターゲットを女子高生よりも若い小学生に設定した。その結果、1年間で500万個以上を販売。見事復活に成功する。