11月23日、バンダイはたまごっちの最新作「たまごっちスマート」を発売する。シリーズ初のウェアラブルタイプだ。バンダイは1996年の発売開始以来、時代に合わせて進化しながらたまごっちというブランドを育て続けている。一体、たまごっちの魅力はどこにあるのか。ライターの小口覺さんがバンダイの担当者に聞いた――。
1996年発売の初代たまごっち
写真提供=バンダイ
1996年発売の初代たまごっち ©BANDAI

あまりの大ブームに生命の危険を感じた社員も

社会現象と言えるブームとなった「たまごっち」。アメリカをはじめ海外でも人気に火が付き、発売から約2年半で累計4000万個以上を販売した。店頭からは商品が消え、さらに飢餓感があおられた。特に白いたまごっちは「レア」とされ、1個数万円で取引されたともいう。バンダイの桃井信彦常務取締役が、その時の状況を語る。

「レア」とされた初代たまごっち(白)
写真提供=バンダイ
「レア」とされた初代たまごっち(白) ©BANDAI

「配送中の盗難を防ぐため、ダンボールから商品名の印刷を消しました。会社の前で営業マンが紙袋を持っていると、知らない人からたまごっちを売ってくださいと言われる。見た目が怖い人たちからも声をかけられ、生命の危険を感じた社員もいたそうです」

バンダイの桃井信彦常務取締役
撮影=プレジデントオンライン編集部
バンダイの桃井信彦常務取締役

語尾が「そうです」と伝聞なのは、桃井常務がバンダイに入社する以前の話だからだ。第1期たまごっちブーム当時は、ソニーで同じ時期にブームを起こしていたプリクラ(プリント倶楽部)に内蔵されるプリンターとカメラの法人営業を担当していた。

「原宿のキデイランドから表参道の交差点まで行列ができたのは、たまごっちとプリクラの2つだったと思います。バブル崩壊後に明るい光が差し込んだのがこれらのブームだった。もちろん、私もいちユーザーとしてたまごっちを持っていました。会議中でも電車の中でも、所構わずピコピコ鳴っていた。飛行機の中でCAさんに電源オフにしてくださいと言われるのも大抵たまごっち。ケータイが普及し、通信機器の電源を切るよう言われ始めた時代です」

当時のたまごっちに通信機能はないが、周囲の乗客からはクレームになる。航空会社からバンダイに、電源オフできるような仕様にしてほしいと依頼もあったという。しかし、この「電源をオフにできない」ことこそが、たまごっちの重要なコンセプトだった。