『忍者ハットリくん』の最新話はインドで作られている

また、インドとの共同製作タイトルとしては、『忍者ハットリくん』や『Suraj the Rising Star』などがあります。日本では『忍者ハットリくん』は昔の作品ですが、インドではまだまだ現役で、最新エピソードは『NINJAハットリくんリターンズ』の名でいまや日本ではなくインドで作られています。

アニメ『忍者ハットリくん』のワンシーン
画像=Ⓒ藤子スタジオ/シンエイ

その他のアジア地域とのアニメの国際共同製作として最近注目されているのがサウジアラビアです。日本の大手アニメ制作会社である東映アニメーションがサウジアラビアとのアニメの共同製作を積極的に行っており、作品としては『きこりと宝物』『アサティール 未来の昔ばなし』『The Journey』などが挙げられます。

映画『The Journey』
画像=@2021 Manga Productions All Rights Reserved

このような日本とアジア諸国との間のアニメ作品の国際共同製作プロジェクトについて、監督やアニメーターといったクリエイティブ面ではなく、主にビジネス面・組織運営面に携わるプロデューサーと呼ばれる職種の人たちに着目したフィールドワークを行っています。

日本と他のアジア諸国とではアニメ作りの進め方に関するお作法や考え方が大きく異なるので、共同製作を進める中で数多くの軋轢あつれきが生じます。そのようないわば「文化の違い」を、関係者はどのように解決して共同製作プロジェクトを完了させ、作品公開までこぎつけているのだろうか? という点を、そういった問題解決のカギを握るプロデューサーの活動に焦点を当てて明らかにしようとしています。

商業的利害対立を乗り越えてアニメはグローバル化する

日本アニメのアジア地域へのグローカリゼーションに関する私自身のこのような研究は、アニメのグローバル化に関してどのような新しい視角を提供できるでしょうか? 未だ探究の途中ではありますが、現時点で暫定的に考えていることをご紹介したいと思います。

アニメ『忍者ハットリくん』のワンシーン
画像=Ⓒ藤子スタジオ/シンエイ

私の研究は、「誰が、どのようにしてアニメをグローバル化させたのか?」という問いについては、「ファンとクリエイターの利他的な情熱がアニメをグローバル化させた」というこれまでのアニメ研究で主流だった議論に対して、「ビジネス主体が関係者の商業的利害を仲介し対立を乗り越えることでアニメをグローバル化させた」という全く別の視角を提供できるのではないか、と考えています。