日本とアジア各国との間でアニメ作品の共同製作が増え、日本アニメのグローバル化が本格的に進みつつある。慶應義塾大学経済学部の三原龍太郎准教授は「そのプロセスは必ずしも歓迎できるものとは言えない。日本のアニメ産業がアジアの『下請け』化するリスクがあるのではないか」という——。
※本稿は、三原龍太郎ほか『グローカルビジネスのすすめ』(紫洲書院)の一部を再編集したものです。
日本がアジアと組んでアニメを作るケースが増えている
私は、アニメがアジアという地域(ローカル)を目指してグローバル化したら何が起こるか、すなわちアニメのアジア地域へのグローカリゼーションをフィールドワークという手法で追いかける研究をしています。
大きくは「アニメのグローバル化をどう理解するべきか?」「それは日本・アジア・世界にとってどのような意義があるのか?」といった問い、より具体的には「誰が、どのようにしてアニメをグローバル化させたのか?」といった問いを探究しています。
そのような問題意識の下でこれまで進めてきた研究プロジェクトのなかに、日本とアジア諸国との間のアニメ作品の国際共同製作に関するものがあります。
アジア地域の政治経済的台頭に伴う同地域の創造産業の「送り手」としてのプレゼンスの増大を背景として、日本のアニメ産業がアジアのプレイヤーとの間でアニメ作品の国際共同製作をするケースが近年増えています。
例えば、中国との共同製作タイトルとしては、『重神機パンドーラ』『実験品家族』『Phantom in the Twilight』『詩季織々』『真・中華一番!』などのアニメ作品があります。
『詩季織々』という作品は、新海誠監督のマネジメントを手がける日本のアニメ会社(コミックス・ウェーブ・フィルム)と上海を拠点とする中国のアニメスタジオ(絵梦)が組んで製作した劇場アニメで、新海アニメの演出と美術で、中国の若者の青春を描いた作品として捉えられます。
また『Phantom in the Twilight』は、北京のアプリゲーム&オンラインゲーム会社の日本支社の一つと日本のアニメスタジオが組んだ作品で、2018年の夏に日中両国で放映・配信されました。余談ですが、物語の舞台がロンドンだったこともあり、当時ロンドンに住んでいた私は制作チームのロケハンの現地ガイドを務めました。