歯周病のある人とない人で新型コロナでの死亡率を調べたところ、歯周病の人は死亡率が8.81倍高いというデータがある。大阪大学大学院歯学研究科の天野敦雄教授は「歯周病菌はウイルスの働きを活性化させてしまうため、感染しやすくなるだけではなく重症化のリスクも高まってしまう」という――。(第2回)

※本稿は、天野敦雄『長生きしたい人は歯周病を治しなさい』(文春新書)の一部を再編集したものです。

肺がウイルスに感染するイメージ
写真=iStock.com/wildpixel
※写真はイメージです

歯科衛生士によるケアがもたらす「三つのメリット」

口のなかは汚い。これが世間でも少しずつ理解されるようになり、さまざまな場面で専門的な口腔ケアが重視されるようになってきました。

歯科衛生士が口のなかをキレイにするプロフェッショナルケア(以下、プロケア)と、患者自身が歯をみがく、あるいは看護師にみがいてもらう場合を比較したところ、歯科衛生士によるプロケアを受けた場合のほうが明らかによい結果が出ているからです。

次の三つは、大きな差が出たことで、プロケアが日常的に行われるようになっています。

① 手術の入院期間が短くなる

手術の前に歯科衛生士に口のなかをキレイにしてもらってから手術を受けた人は、平均して2割も入院期間が短くなることが明らかになりました。ちなみに、患者自身で歯をみがいた場合と看護師にみがいてもらった場合では、結果に大きな差はありませんでした。

早く退院できるということは、手術後の経過がよい、治りが早いということです。これを受け、手術の前後(周術期)の口腔機能管理への保険適用が認められたため、最近は歯科衛生士をスタッフとして迎える病院がふえています。

手術の前には歯科衛生士による専門的な口腔ケアを行うことがスタンダードになりつつあり、私のいる歯学部附属病院のスタッフも、同じ大学の医学部附属病院のさまざまな診療科からの依頼を受けて患者さんの術前ケアを行っています。

しかし、もともと現役の歯科衛生士の数は少ないので歯科での衛生士不足が起きるのではないかと、私たち歯科医は心配しています。