企業側は政治家に直接アプローチするしかない
企業側にしても、せっかく献金しても党の事情によってその献金は幹事長を中心に割り振られることで「企業の要望を直接政策に反映できるような生きたカネにならない」ことになる。
ロビー活動などのルールが未成熟な中では、東京電力や関西電力など電力大手なら「原子力発電所の再稼働」、NTTやKDDIなど通信各社なら「スマホ料金の値下げ問題」といった業界の個別問題については最終的には担当する大臣や業界に影響力のある議員に直接アプローチするしかない。
経団連なども能力に劣る「世襲議員」の増加や、その時の流行りに乗って当選するタレントや「チルドレン」の増殖には頭を痛めている。
英国には政治家が政策策定に専念できる仕組みがある
すでに13年には「天下国家を語ることのできる優れた政治家が着実に当選回数を重ねることが困難になる一方で、経験不足の新人議員が散見されるようになっている」と問題点を指摘。かつての中選挙区制におけるメリットの再評価などあるべき選挙制度の検討を求めたが、当時の米倉弘昌経団連会長と安倍首相の関係が悪化、議論が深まることはなかった。
中国の経済や軍事面での台頭など、日本を含めたアジアの安全保障が喫緊の課題になる中で、各議員が地元選挙区の利害を代弁するだけに終始することになれば、国にとって大きな損失となる。
特に自民党では、議員の「序列」として最上位に立つのは、小選挙区で勝ち上がって当選回数を重ねた衆院議員だ。しかし、英国では各地で戸別訪問などを通じて「どぶ板」を踏みながら力をつけた議員が党によって有力選挙区に引き上げられ、政策策定に専念できる仕組みを取り入れている。
自民党でも「政策立案能力」にたけた議員は比例区の上位の序列に置き、そこから専門分野の大臣に長く据えるなど、比例区を置いた原点に戻り、「中長期的な」議員のキャリアパスを構築する必要もあるだろう。