ようやく「政治圧力」から解かれるとみられた

「台風は去った」。菅義偉氏の首相退陣を通信業界はそう受け止めた。

菅氏が9月3日に首相退陣を表明して以降、東京株式市場で日経平均株価は上昇を続け8日には終値がおよそ半年ぶりに3万円を突破した。そのなかで特に買いが殺到したのが通信銘柄だ。NTTの株価は3日から9日までに4%の上昇。KDDIも同様に5%上げた。

総務省接待問題をめぐり記者団の質問に答える菅義偉首相(左端)
写真=時事通信フォト
総務省接待問題をめぐり記者団の質問に答える菅義偉首相(左端)=2021年3月16日、首相官邸

5年半に及ぶ携帯料金の「官製値下げ」。安倍晋三首相(当時)がNTTドコモなど通信大手に対して2015年秋に唐突に突きつけたのが端緒だ。安倍首相のあとを継ぎ、総務相も務めた菅首相が一貫して主導してきた。

その菅首相の退陣でようやく「政治圧力」から解かれるとみて、市場はNTTやKDDIなどの通信株に一斉に買いを入れた。

「生き残りのために役所にすがりたくなる気持ちもわかる」

「NTTさんには同情するところもある」。国内大手メーカーの幹部はこう話す。「外にはグーグルやアマゾン・ドット・コムなどGAFAからの脅威にさらされ、内からは官邸から『携帯料金を値下げしろ』と迫られる。生き残りのために役所にすがりたくなる気持ちもわかる」。

この幹部がいう「政府にすがる」とは、NTTの澤田純社長などNTT幹部が総務省の次官候補など幹部たちを同社の迎賓施設に呼んで「接待」して問題になった一連の騒動を指す。その実態が明るみになるにしたがって、NTTが接待していたのは総務省の幹部にとどまらず、当時の武田良太総務相にも及び、NTTと政府との「癒着」として非難を浴びた。

「密会」の内容は「スマホ料金の値下げには応じるが、その見返りとして子会社のNTTドコモの完全子会社化を認めてくれ」というのが業界の通説となっている。武田前総務相もNTTの澤田社長もこうした「請願」の事実はないと国会で述べているが、会合の時期とその後のNTTの動きを見れば、その言葉をそのまま信じる人はいないだろう。

一方の米国。「カーン氏を反トラスト法(独占禁止法)の調査から外してくれ」。米アマゾンやフェイスブックは米連邦取引委員会(FTC)に対し、リナ・カーン委員長を反トラスト法(独占禁止法)に関する調査から除外するよう求め続けている。