夜の会合で「密談」を重ねる日本、堂々と法廷で訴える米国

カーン氏はエール大学法科大学院の学生だった2017年に発表した論文でアマゾンンの競争上の脅威について警鐘を鳴らし注目を集め、史上最年少の32歳で6月にFTC委員長に抜擢された。

カーン氏はこれまでの論文の中で、アマゾンなどは自ら運営する通販サイトで原価を下回る価格を設定して、競合を排除し独占を確立してから値上げに踏み切るなど、消費者に不利益を強いているとして指摘してきた。

カーン氏は独占を強めるアマゾンに対して、通販サイトの運営を直販と外部企業向けに分割したり、PB事業の廃止を求めたりすると報じられている。フェイスブックも「個人向けSNS市場を独占しており、インスタグラムや対話アプリ、ワッツアップの買収は違法だ」として、インスタグラムなどの分割を求められる可能性がある、と報じされている。

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写真=iStock.com/ponsulak
※写真はイメージです

アマゾンやフェイスブックもFTCへ嘆願書を出すなど、双方のやり取りは公の場で知ることができる。

日本企業は、人目を避けて夜の会合で「密談」を重ねて自社の利益に導こうとする。一方、米国企業は、独禁当局に嘆願書を提出して、そのトップの解任を求め、さらには正々堂々と法廷で自社の主張を訴えているわけだ。

企業の「ロビー活動」に対して明確なルールがない

政治状況や世論の変化やテクノロジーの進化など、その時々で企業のおかれる立場や環境が変わるのは、どこの国でも同じだ。時代の変化で逆境に直面する企業や、逆にその波に乗ろうとする企業が政治家や政府に詰め寄ることはいつの時代にもある。しかし、問題はその「やり方」だ。

米国では議会や政府への「ロビー活動」が認められている。米国では政府への働きかけは主にロビイストが担う。そのロビイストは議会への登録が必要で、ロビー団体は担当企業や受け取った報酬などの開示が必要だ。企業にもロビー活動情報の開示を義務付けている。

20年通年のロビー活動費が民間最多だった米フェイスブックは同年10~12月期に469万ドルを投じたことを公開している。著作権や安全保障、移民など16の領域でロビー活動を展開したことも開示。こうした情報公開を通じて企業と政官の接触の透明性を確保している。

また、米国では官民の人材が政権交代とともに入れ替わる。政府職員が民間に移った場合、一定期間は所属した政府機関にロビー活動できない決まりもある。

日本にはこうした企業の「ロビー活動」に対して明確なルールがない。このため、人目を忍んで政治家や官僚に接触する「水面下」の動きが横行する原因となる。