条件付けの回路ができあがるとドーパミンの分泌が定型化する
共通点3:スリルを求めゲーム化していく
窃盗症と盗撮加害者、彼らにとって欠かせないのがスリルです。より強いスリルと刺激を求めてエスカレートしていくことも共通しています。
ここで理解の一助となるのが、脳から分泌される「ドーパミン」です。
例えば盗撮加害者が、エスカレーターで目の前にいる女性のスカートの中を、スマホを使って盗撮していたとします。このような依存行為をするとき、人間の脳の報酬系と呼ばれる部位では、側坐核という部位が活性化され、ドーパミンという神経伝達物質が大量に分泌されています。そしてこれは、どの依存症にも共通していえることです。
ここで、もう少し専門的に「性的嗜癖行動」の形成プロセスについて見ていこうと思います。ドイツの精神病理学者ヴィクトル・ゲープザッテルは、性的倒錯の病理を嗜癖性の病理であるとしています。また精神科医の故・小田晋氏も、その嗜癖性について生化学的視点から以下のように述べています。
強迫的性行動は、脳視床下部にある性ホルモン中枢、性行動中枢と視床下部・扁桃核にある攻撃中枢が同時に興奮し、その興奮が極点に達すると極めて強い快感を感じ、それが反復化し嗜癖化するものと考えられています。この際、A10神経を通じての麻薬類似物質(β—エンドルフィン)と覚醒剤類似物質(ドーパミン)の同時大量分泌が起き、これが嗜癖化の下部構造になると考えられます。
(小田晋「依存精神病理学の展開と異常性愛」アディクションと家族(2)、2005)
(小田晋「依存精神病理学の展開と異常性愛」アディクションと家族(2)、2005)
さらに精神科医の斎藤学氏は、テストステロンとセロトニンの関係から、その嗜癖性を以下のように述べています。
テストステロンは男性の攻撃性・積極性を推進している代表的なアンドロゲン(男性ホルモン)であり、主に男性の睾丸から分泌されています。女性の卵巣からも少量であるが分泌されており、また男女ともに副腎からの分泌もあります。男性は女性に比べ20~40倍のテストステロン濃度があり、これが男女の性衝動に見られる違いの主因と考えられています。このテストステロンが男性の性的嗜好、関心、動機、行動などを支配しているのですが、テストステロンが支配するのはあくまでも性衝動であって、性交そのものではありません。テストステロンは性的自慰を促進しますが、それが必ずしも性交には結びつかないのが特徴です。
(斎藤学『男の勘ちがい』毎日新聞社、2004)
(斎藤学『男の勘ちがい』毎日新聞社、2004)