商談会の開催は活きた税金の先行投資

海外バイヤーを視察に招くためには、飛行機代などの経費を含めて、1社あたり数十万円かかります。もちろん視察が必ず成約に結びつくかどうかは分からないため、一つの企業がこれを全額負担して海外のバイヤーに来てもらうことは、リスクが大きいのです。そこでJETROでは、県内の酒蔵、水産加工業者、納豆工場など、食品事業者のみなさまを取りまとめて、海外からバイヤーを招待して商談する機会を提供しています。

JETROは政府機関ですので、この事業を実施するにあたっては、みなさまからお預りしている税金を使っています。海外からバイヤーを複数招待するには、それなりの出費を伴います。しかし、結果としてそのようなイベント開催にかかった経費の何倍もの利益が輸出を通じて茨城に還元されてきました。そう考えると、このような商談会の開催は価値ある投資だといえるでしょう。活きた税金の先行投資として、今後も積極的に進めていこうと思っています。

握手をしている人
写真=iStock.com/GCShutter
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バイヤーの選定が勝負を分ける

さて、この事業において最も重要なのが、招待するバイヤーの選び方です。どのバイヤーに来てもらうかが決まった時点で、すでに勝負の半分は決まっているといっても過言ではありません。

バイヤーを選定する際には、いくつか見るべきポイントがあります。その中でも絶対に欠かせない1つ目のポイントが、「ネガティブチェック」です。この点は、そのバイヤーが進出先の国において過去に不払いなどの問題を起こしていないかという情報を、JETRO海外事務所に照会することができます。このようなスクリーニングを予め行っておくことで、大きなリスクを軽減できるでしょう。

2つめのポイントは、いざ成約となった場合に輸出ルートが確立されているかどうかの確認です。日本国内に代理店があり、そこを通して決済ができれば理想的です。バイヤーが実際にこのような代理店を通じて輸入を行った経験があれば、スムーズに手続きを進めることができます。日本から食品を輸入した実績のない海外バイヤーに来てもらうのは、新規開拓として良さそうに見えるかもしれませんが、私の実体験から申し上げると、時間ばかりかかって費用対効果は低いと言わざるを得ません。

他にも望ましい海外バイヤーの条件として、例えば多少なりとも日本語ができることが挙げられます。また、大手バイヤーの発注ロットに対応できずに商談が流れてしまうということを防ぐために、取引の規模が身の丈にあっていることも重要です。そして、価格よりも品質を重視して、少量で長期的な関係を構築してくれることも大切です。

大量に買うからといって安値で買い叩いてくる海外バイヤーは多数いますが、少なくとも私はそのようなバイヤーは呼びませんでした。今挙げたほかにも細かいポイントはいろいろありますが、最後は人間と人間の関係であるため、「この人と一緒にやっていきたい」という気持ちを持てるかどうかが鍵であるように思います。

こうしたことを踏まえ、私自身もバイヤー選びのために事前に海外に足を運び、バイヤーにインタビューを行い、自分の目で確かめてから招待する方々を正式に確定する、というプロセスを繰り返し行いました。せっかくの機会を無駄にしないためにも、このような地道な下調べと準備は欠かせません。