予想される最悪のシナリオは
そのリスクに関して、共産党政権は信用不安の拡大を回避しつつ不動産業者などの債務問題に対応し、国内の理財商品市場を守ることは可能と考えているようだ。しかし、9月には、複数の投資家がエバーグランデの本社ビルに詰めかけ、返金を求めた。理財商品の価値下落におびえる個人投資家は増えている。理財商品の価値が守られるか否かは、今後の習近平政権の意思決定次第だ。
もし、共産党政権の債務問題への対応が十分ではない場合、一つのシナリオとしてエバーグランデはクロスデフォルトに陥り、中国経済内部では信用不安が急速に伝播する恐れがある。その場合、中国の不動産市況は悪化し、理財商品の価値は一段と下落するだろう。
その結果、消費や投資は減少する。不動産業者の取引相手などの企業の債務不履行も増えて中国の銀行システムにストレスがかかる恐れもある。それは中国経済の減速を一段と鮮明化させる要因だ。そうした展開が現実のものとなれば、中国経済とのつながりの強いわが国やアジア新興国をはじめ世界経済にもマイナスの影響が波及するだろう。