民間の金融機関に打撃を与えるおそれも
その一方で債務返済のめどが立たない事業に関しては整理(清算)されるだろう。その際に共産党政権は債権者に対してかなり強硬に、大幅な債務の元本削減をのませる可能性がある。それは、民間の金融機関などに相応の打撃を与えるおそれがある。
そのショックを抑えるための方策の一つとして、中国は国有の金融資産管理会社(AMC)を活用して不良債権を処理する可能性がある。1999年に中国は4つのAMCを設立してアジア通貨危機の発生によって増加した銀行の不良債権を買い取った。2020年には21年ぶりに5社目のAMCである“銀河資産管理”の開業が認可された。それは、エバーグランデをはじめとする債務問題への対応を念頭に置いた共産党政権の行動といえる。
ただし、10月上旬の時点で共産党政権は猶予期間に入ったドル建て社債の利払いをはじめエバーグランデなどへの対応指針を明確にしていない。今後の展開は決め打ちできない。
国外よりも心配な中国国内への影響
中国経済をめぐる不透明な要素は増えている。
ポイントは、エバーグランデのデフォルトが世界経済にどの程度の影響を与えるかだ。基本的には、同社のデフォルトなどがリーマンショックに匹敵する世界的な金融危機に直結する展開は考えづらい。その点に関しては、中国の国外と国内の投資家への影響の2つの視点から考えるとよいだろう。
まず、中国国外の投資家は、主にドル建ての社債を保有している。エバーグランデのドル建て社債の発行残高は約2兆円だ。保有主体も分散されており主要先進国の金融システムが損失を吸収することは可能だろう。エバーグランデのデフォルトの発生自体は、中国経済内部の問題にとどまる可能性がある。
ただし、中国国内の投資家への影響を考えると、楽観はできない。最大の注目点は、中国国内の理財商品市場への影響だ。エバーグランデのデフォルトは、債務不履行や企業倒産が増加するトリガーとなり、中国の個人投資家の資産を棄損する恐れがある。そのインパクトは軽視できない。