資産バブルに沸いた80年代日本と似ている

それは不動産や道路などのインフラへの投資によって経済成長を実現し、求心力を維持してきた中国共産党政権にとって重大な意味を持つ。エバーグランデなどの債務問題の深刻化は、借り入れを増やして投資を行い、それによって経済成長を目指す共産党政権の経済運営が限界を迎えつつあることを示唆する。不動産業界での債務問題の深刻化は、共産党政権の権力基盤を不安定化させる要因になりかねない。

政治体制や金融システムの違いなどはあるが、足許の中国経済は、1980年代末、資産バブルの絶頂期を迎えたわが国経済の状況に似ている。わが国の教訓にもとづくと、共産党政権は不良債権処理を進め、必要に応じて金融機関などに資金を注入し、その上で新産業の育成に取り組まなければならない局面に差し掛かっている。不動産バブルの後始末に対応し、新産業の育成を進めることができるか否か、共産党政権は正念場を迎えていると言ってよい。

「共同富裕」を掲げる習政権は救済するのか

共産党政権の債務問題への対応は、共同富裕(国全体で平等に豊かになろうという考え)が大きく影響する。習近平政権はアリババや滴滴出行(ディディ・チューシン)など民間のIT先端企業の創業経営者への締め付けを強めている。それによって共産党政権は貧富の格差の拡大を食い止める姿勢を世論に示したい。特に、ディディに関しては一時、北京市人民政府が同社に出資し政府の管理下に置くことが検討されているとの見方が浮上した。

共産党政権がエバーグランデを救済すれば、それは富裕層である同社創業者の許家印氏を助けることになり、世論の不満や批判を買うだろう。その展開を避けるために、共産党政権がエバーグランデ全体を救済することは考えられない。

それよりもエバーグランデは共産党政権の指揮の下で事業を切り売りし、維持できる部分に関しては存続させるだろう。その場合、国有・国営企業、あるいは政府系の金融機関などが資産取得に参画することによって、エバーグランデの存続事業は政府の管理下に置かれる可能性がある。