SNSは共感から「実質わたし」の空間へ
こうした要素を含む投稿が、マーケティングにおいて「実質わたし」を惹起させるのである。これまでSNS空間においては、共感が重視されていた。しかし、今後は「実質わたし」と思わせることが有力な手段として用いられていくだろう。
これにはもちろん賛否両論がある。否定派は、自分自身の意見や考えと、他者のそれとを明瞭に区別でき、また、すべきという前提に立っているだろう。盗作や剽窃が許されないのは当然であるが、私たちは誰もがさまざまな影響関係の中にあるということは認めてもよいはずだ。「実質わたし」だと思うことで、自分の視野が広がることもあるだろう。
他方で賛成派は、拡散や受容のされ方にマーケティング上の魅力を感じるかもしれず、また上述のように個人の視野を広げる可能性に期待するかもしれない。しかしながら、こうした手法がユーザーの自律性を損ねる可能性があることには、十分な配慮が必要である。
複雑な情報環境にあって、私たちは、自分が何を考えているかが分からなくなる時がある。そのような時に、面白く、知的であるような、そうした言葉に触れた時、私たちは興味を惹かれ、新しい自分に出会う。かつてとは異なり、今の時代は、他者に出会うのは、自分に出会うより難しいことなのかもしれない。