買収によって地元の知識と即戦力を得た

12.自動車ローン

人々が豊かになると、自分の足がほしくなる。バンク・オブ・イタリーは自動車ローンを初めて開始し、さらにカーディーラーにも融資したので、需要をさらに後押しすることになった。自動車は担保価値のある資産だけれど、急速に減価償却するので、融資はほとんどが借り手の人柄に依存したものとなる。バンク・オブ・イタリーは、資産ではなく借り手を見て融資をする方法を編み出したので、そのために提供がどうしても必要になったのが……。

13.割賦融資

銀行としては過激だったが、個人にとっては人生を一変させるものだった割賦融資で、人々は不測の事態になっても高利貸しに頼らずにすむことになった。これは大量の善意を作り出し、それがさらにバンク・オブ・イタリーの成長を後押ししたので、どうしても必要になったのが……。

14.急速拡大

こうしたイノベーションすべての複合効果として、急速に拡大する必要が出てきた。バンク・オブ・イタリーはときに新しい銀行を作ったが、むしろ他の銀行を買収したがった。これで地元の知識とすぐに働ける人材とが手に入る。でもこんなにたくさん新しい銀行を追加したおかげで、彼らは最も強力な要素かもしれないものを開発せざるを得なかった。それが……。

従業員に自社株を持たせることで支配権を守った

15.支店営業の銀行

特定地域につながった銀行業はリスクが大きい――その地域全体に大惨事がふりかかれば、不良債権の山ができる。一方、複数の地域で営業すると、すさまじい効率性が得られる。安定した地域は貯蓄過剰になり、成長地域は需要過剰だ。ある農業地域は不作で、別のところは豊作かもしれない。支店方式の銀行システムは、こうした力をバランスさせた。これは単一銀行ではできないことだし、巨大会社の金融的な力を最小の町にまでもたらした。

支店銀行方式はあまりに財務的に優れていたので、バンク・オブ・イタリーは狂ったように買収を続けた。町を見つけ、銀行を買収し、そして自社のイノベーションスタックを適用する。それだけの拡大の資金を得るため、作り出すのがどうしても必要だったのが……。

16.所有権の分散

この急成長は巨大資本を必要とした。バンク・オブ・イタリーは、ごくわずかな株式をたくさんの人に販売する方法の先鞭をつけて、従業員にも顧客にもインスピレーションと富を与えた。A・Pは、だれか個人や機関が数パーセント以上の株式を持ってはいけないと固執した。これは自分自身も含む。おかげで資金調達は面倒になったが、トラブル時に単一の強力な存在から銀行を守ることにもなった。A・Pが作った機関は「小者」に奉仕するだけでなく、小者に所有させる機関でもあった。従業員が会社の一部を所有するのがカッコよくなる1世紀も前に、バンク・オブ・イタリーは人々に自社の株式を販売していたのだった。それでその人々が助かっただけでなく、この銀行の支配権を奪おうとした敵対勢力からも、この仕組みのおかげで幾度となく救われたのだった。