あの手この手で“リターン”を創造

題して「milktub海外公演支援計画」。この“俺たちをドイツに連れていってくれプロジェクト”は、言ってみたら自分たちのロマンとわがままばかりで、正直、ファンにはあまりメリットがないものだった。だって予算の関係上、俺たちのライブを実際にドイツで見る、という現物としてのリターンを出すことはできないからだ。

それでも、できることはなんでもやるぞとばかり、「現地の絵はがきで書いたお礼状やお土産(むろん、自腹で購入)がもらえる」とか「フェスの映像をYouTubeで配信」といったあの手この手の策でリターンの価値を出すことに奔走した。

結果、目標金額140万円に対して支援総額は約180万円、130%でのフィニッシュとなり、おかげでめでたくバンドとしてフェスに参加することができた。

先に予算があると、どんな可能性が広がるのか

また、同じ年にはクラウドファンディングでアルバムも作ってみた。弊社タイトル『DEARDROPS』でボーカルを務めた「Prico」の新しいユニットとして「Prico with DEARDROPS」としてアルバムをリリースすることになった。こちらも350万円の目標に対して800万円以上の支援を頂いた。

アルバムを作るにあたって、実は予算で諦めることはけっこう多いので、予算が先にあるというのは制作においては良いことずくめだ。例えばレコーディングした音源を仕上げる作業に「マスタリング」という工程があるのだが、「もう少し資金に余裕があったら、あそこのスタジオの職人エンジニアさんに頼むんだけどなぁ……」とか、レコーディングするスタジオも「予算がないから安いスタジオ使おうか」と泣きを見ることが過去に多々あった。

予算を圧縮するテクニックもなくはないが、毎度毎度「すまん! 今回はこれでお願い!」と安い金額で仕事してもらうにも限度はある(ミュージシャンやエンジニアは職人なのだから、それ相応の対価を払わないといけない)。

その点、先にまとまった予算があれば、早い段階で「通常より良いスタジオで作業できる」「入れたい楽器を頼みたいミュージシャンにお願いできる」「腕のいいエンジニアに仕事をお願いできる」などの判断ができてアルバムの質が向上するし、事前に広告費などをゲットすることでプロモーションにも幅が出せる。CDなどの盤物が売れなくなっている今の時代だからこそ、先に予算があるというのは非常に重要なことなのだ。