失敗こそ、学びのチャンス

そうやって付き合う人を親が選ぶようなことをしていたら、結婚相手も自分で決められなくなります。「小さなベンチャー企業の社員はやめておいたほうがいいんじゃない?」なんて、親がいちいち吟味する……。

実際よくありますが、その子の人生ですから。人付き合いを自分で決められないなんて、幸せと言えるでしょうか。

失敗こそ、学びのチャンスです。そして、失敗を乗り越えるほどに、失敗に対する耐性も身につきます。子どもの頃にたくさんの失敗をさせてあげたほうがいいのです。

株式会社ユーグレナ代表取締役社長の出雲充いずも みつるさんは、日本を代表する素晴らしい起業家の1人です。なにせ「ミドリムシで世界を救う」という途方もない夢を現実にしようとしている。

今でこそミドリムシは健康食品として認知されるようになりましたが、出雲さんが起業した当初は「ミドリムシで世界の飢餓問題を解決できる」と言っても、ほとんどの人が理解してくれませんでした。培養の研究をし、数々の困難をクリアして販売できるところまで持っていっても、誰も買ってくれない。普通の人ならとっくに心が折れるところです。

でも出雲さんは違いました。企業をまわって営業し続け、なんと501社目で買ってもらえることになったのです。ユーグレナは2014年に東証一部上場を果たし、今はミドリムシを燃料にして飛行機を飛ばそうとしています。

「母はなんでも失敗させてくれる人でした」

その出雲さんに僕の友人がこんな質問をしました。
「出雲さんが子どもの頃、お母さんはどういう子育てをされていましたか?」

出雲さんのような方がまた出てくるためには、親は子どもに何をしてあげたらいいのだろうという問題意識からです。

レインブーツを着て公園で遊んでいる女の子
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/Hakase_)

出雲さんが答えてくれたのは、「母はなんでも失敗させてくれる人でした」ということでした。なんでもやりたいようにやらせてくれ、見守ってくれたそうです。

たとえば外でおにぎりを食べていて、地面に落としてしまったとき。泥だらけのおにぎりを拾ってそのまま食べようとしたら、ほとんどの人は「汚いからやめなさい」と止めるでしょう。

でも、出雲さんのお母さんは止めません。やりたいようにやらせておきます。泥だらけのおにぎりを口に入れたら、まずいから出します。子ども自身が食べるのをやめるはず。だから止めなくてもいいという考えだったのです。