女性管理職の比率を高めるにはどうすればいいか。フリマアプリ大手メルカリの山田進太郎社長は「日本人の男性だけが中心の会社では必ず成長が止まる」と考え、社内に「D&Iチーム」を立ち上げた。そこで明らかになった課題は、「育休取ったのに昇進する女性はズルい」という一部の意識を変えることだった。ジャーナリストの浜田敬子さんがリポートする――。
山田社長を突き動かした社員の“草の根”活動
メルカリでは、多様な人材を最大限活用するダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を経営トップの山田進太郎社長自身が推し進めている。2年ほど前からマネージャー層には国籍や性別による無意識の偏見を払拭するためのアンコンシャスバイアス研修を実施するなど、D&Iを推進する研修や仕組みも整えてきた。
だが、日本人男性中心の社会や社内に対する山田の強い危機感があったと同時に、トップや経営陣にD&Iの必要性を訴え続けた社員たちの粘り強い“草の根”の活動もあったことはあまり知られていない。企業でD&Iを根付かせるためにはトップの強いコミットメントが必要だと言われるが、それだけでは社内全体に浸透させることは難しく、トップとボトム双方からの働きかけだということをメルカリの事例は教えてくれる。
メルカリの“下からの”D&Iのエンジンになっているのは、D&Iチームマネージャーの寶納弘奈とD&Iリードの品川瑶子。今でこそ2人とも、D&I推進が“本業”だが、当初は社内有志の活動に参加したところから始まった。
寶納は2018年5月にメルカリに入社した。当時のメルカリは毎月100人以上が入社する急成長期で、入社2週間後には「もう新メンバーじゃないからね」と言われるほどだった。
メルカリは現在東京オフィスの約2割、エンジニアの半数を外国籍の社員が占める。すでに2018年当時外国籍の社員が急増しており、日本語が話せる/話せないで社員間の情報格差が課題になっていた。当時スラック上の外国人社員たちのチャンネルには、情報に公平にアクセスできないこと、社内の意思決定に参加しづらいことへの不満や苛立ちがあふれ、実際のミーティングの席でもトラブルが起きていた。