サプリだけで年100万円超が医師の懐に

このクリニックの主な治療法は断食とサプリだ。断食すれば悪いものが石灰化して体外に出るという。例えば胃がんは口から大きな石みたいなものが出て、乳がんは皮膚から出ると有り得ない主張をした。またサプリもブラジルのアマゾンで見つけた秘薬があると言い、ビラを渡された。筆者があとから調べたが同様の物がアマゾンのサイトでも売られていた。

その他にも自分が調合したというサプリなども紹介され、おおよそ月々10万円程度を患者が支払うという。1〜2年使い続ければ、医師は何もせずに120万〜240万円程度入ってくることになる。その他、サウナで40分8000円や水素療法(点滴)1回1万円など、はまった患者からいろいろと搾り取る、医学的効果が認められていない治療が用意をしてあった。

実際に私の患者も2年で300万円ほどを費やしたという。その間に2cm以下だった小さな腫瘍が乳房の皮膚を食い破るまで大きくなった。不審に思った患者は医師に問い合わせたが答えは「サプリメントの量が足りない」と返ってくるばかり。最後は着信拒否となり患者は騙されたことを確信したという。

診察室での会話イメージ
画像提供=上松正和
ブラジルのアマゾンで見つけたという高額なサプリメントを勧める医師

患者としては気になるのは治る確率である。実際にがん治療においてはいったん治ったようにみえても、小さな細胞が残って数年で塊になるまで増えることがあるため、5年生存率や10年生存率というものを使う。今回は患者のふりをしているため、治る確率をきいてみた。

大もうけするための治療の代償はあまりに大きい

丁寧にこの生存率の話からされると思いきや、返ってきた答えは「わからない」。あれだけ乳がんの標準治療(手術+放射線治療+抗がん剤、5年生存率は95%)を否定しておきながら、医師推薦の断食とサプリメントで治る確率は示さない。「治る時は治るし、だめな時はだめ」と言うばかりだ。徹底して責任はとらない姿勢を見せていた。

診察室での会話イメージ
画像提供=上松正和
医師はがんの治る確率を尋ねると声を荒らげた

この荒唐無稽な言説に対して、自分が医師と明かし説明を求めた。それでも詐欺クリニックの医師は「ウソは言っていない」と主張しつつも、「問い詰められる筋合いはない」や「ウソだからといって(ウソも)へったくれもないじゃないですか」などと開き直るまでになり、最後まで自らの過ちを認めることはなかった。詳細はYouTubeにあげているので参照してほしい。

このクリニックの医師はおそらく効かないことを確信してやっているのだろう。どこにも根拠がなく、目の前の患者は悪化する一方のはずだからだ。もし医療界に認められていない治療が効くと信じている医師ならば必ず統計を取るが、この医師は「そんなもん面倒くさい」と言い放った。楽にもうけられる手段として詐欺のがん治療をしているのだろう。ただその代償は患者の命で支払われる。