「次世代セル生産ロボットは、人間の代わりに部品の組み立てができる知能化技術を取り入れたところに最大の特徴があります。要するに、習熟効果やエラーリカバリーが採用された点に新しさがあり、従来の産業用ロボットの単に運ぶから、組み立てるという新しい市場を担う機能が生み出されたわけです。夜中にエラーが起きたときにヒトが必要というのでは本当の自動化にはなりませんし、ロボット自らが考えて動作する鉄腕アトムに近いものをつくらないと、本当のセル生産の実現は難しいと思います」
多関節ロボットで世界トップクラスの安川電機(福岡県北九州市)が開発した7軸双腕型ロボット「MOTOMAN(モートマン)-SDA10」は、動作がさらにヒトに近づいた印象を受ける。
では、現在多関節ロボットの主流である6軸から今回の7軸へ、つまり関節が1カ所増えたことによってどんな動きが可能になったのか。
小川昌寛・新規ロボット事業統括部事業統括部長によれば、次のような表現で言い表すことができる。
「ひと言で言うと、かゆいところに手が届くようになったということでしょうか。例えば、自分の懐のあたりでポケットに手を入れるように、高い自由度で腕を動かせるようになっただけでなく、背中に手を回して作業できるようになったのが大きな特徴です。同じスペースで、今まで以上の仕事がこなせるロボットが実現したのは、さらにヒトの作業環境に近づいたということを意味します」
もともと産業用ロボットは、ヒトを危険な作業から解放すると同時に、製品の精度追求を目的として工場の生産ラインに導入されてきた。しかし、日本が抱える少子高齢化による人材不足という社会問題を解決するには、これまでのロボットが対応できなかった、より高度で複雑な作業が求められるようになっている。