夜、ヒトがいらないセル生産ロボット

最後に、世界で最先端を走る日本の産業用ロボットの現状はどうか。

早大理工学術院とテムザックが共同開発した、感情を表現する「コビアン」。

三菱電機と京都大学は、生産ラインで一人の作業者が多数の工程を担当して製品を完成させる「セル生産」を担えるロボット知能化技術を共同開発した。自ら動作に習熟して作業時間を短縮していく技術や、エラーをしても検知してやり直す機能などが組み込まれ、今後、長時間作業での安定性や信頼性を検証したうえで3年後を目途に実用化を目指す。

同ロボットの開発拠点、三菱電機先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市、以下先端総研)を訪ねた。2台のロボットが小型電気製品のブレーカーを組み立てていたが、「知能化」を感じさせる動きが随所に見受けられた。

ロボットの役割分担は、向かって右側が部品供給、左側が組み立てを担当する。まず、右のロボットアームが部品供給トレイに伸びてネジをつかもうとするが、複数のネジがばらばらに置かれていて、三次元ビジョンセンサーでどれをどうつかむか、位置決めをしなければならない。加えて、ロボットの手先にかかる小さな圧力を計測する力覚センサーも備え、力の加減を自分で感じながら作業を続ける。

ブレーカーの組み立ては25個の部品を扱うが、それらを順番に取り出して、しかも正確に取り付けていく。三菱電機はそのための専用ソフトを開発した結果、人がノウハウを蓄積して熟練していくようにロボット自身が学習し、部品を運ぶ作業では50回程度繰り返すうちに最短経路を見つけ出す。それにより、作業時間を最大44%短縮することができた。先端総研の田中健一副所長は、セル生産ロボットの実用化が射程圏内に入ってきた意義を次のように語っている。