「国連軍地位協定」を基に寄港した艦艇も

一方、海上自衛隊側の横須賀基地には補給艦「フォートビクトリア」が8月21日から22日まで、またオランダ軍のフリゲート艦「エファーツェン」が9月5月から7日まで寄港した。寄港理由はどちらも日英、日蘭の「防衛交流の深化」だ。

海上自衛隊横須賀基地に寄港したオランダ軍のフリゲート艦「エファーツェン」
写真=オランダ海軍のホームページより
海上自衛隊横須賀基地に寄港したオランダ軍のフリゲート艦「エファーツェン」

ところが、防衛交流とは別の理由で寄港した艦艇もある。

英国のフリゲート艦「リッチモンド」と「ケント」は8月上旬から下旬にかけて米軍佐世保基地に寄港。また補給艦「タイドスプリング」は9月5日から7日まで米軍横須賀基地を利用した。

米軍佐世保基地に寄港した英フリゲート艦「リッチモンド」
写真=英海軍のホームページより
米軍佐世保基地に寄港した英フリゲート艦「リッチモンド」
米軍横須賀基地に寄港した英補給艦「タイドスプリング」
写真=英海軍のホームページより
米軍横須賀基地に寄港した英補給艦「タイドスプリング」

この3隻の寄港は「国連軍地位協定が根拠」(外務省)というのだ。どういうことだろうか。

ここでいう国連軍とは、1950年に始まった朝鮮戦争に伴う国連安保理決議に基づき、米国を中心にして編成された朝鮮国連軍のこと。1953年に休戦を迎えたが、休戦ゆえに、現在も残っている。

朝鮮戦争勃発時に米軍占領下の東京に置かれていた司令部は1957年、韓国の首都ソウルに移転した。司令官は在韓米軍司令官が兼務する。

朝鮮国連軍基地を兼ねる在日米軍基地

日本とも密接な関わりがあり、在日米軍司令部のある横田基地に「朝鮮国連軍後方司令部」が置かれている。オーストラリア軍の空軍大佐が司令官を務め、米軍出身の下士官ら計4人が専従として勤務する。

横田基地が朝鮮国連軍の基地を兼ねるのは1954年、日本政府と朝鮮国連軍との間で締結した国連軍地位協定による。現在、7カ所の在日米軍基地が朝鮮国連軍基地を兼ねている。基地名は以下の通りだ。

横田基地(東京都)、嘉手納基地、普天間基地、ホワイトビーチ地区(以上、沖縄県)、横須賀基地、キャンプ座間(以上、神奈川県)、佐世保基地(長崎県)

いずれの基地にも星条旗と並んで国連旗が掲げてあるものの、朝鮮国連軍の専用施設があるわけではない。滑走路、港湾などはいずれも米軍施設を利用する。

国連軍基地を兼ねた米軍基地と海上自衛隊基地の違い

これらの施設を利用できるのは国連軍地位協定締結国の日本、オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、ニュージーランド、フィリピン、南アフリカ、タイ、トルコ、英国、米国の12カ国。実質的には基地を提供する日本を除く11カ国ということになる。

英国は地位協定締結国のため、米軍基地を兼ねる横須賀基地や佐世保基地を利用することができる。一方、オランダは非締結国のため、海上自衛隊基地を利用するほかない。

国連軍基地を兼ねた米軍基地と海上自衛隊基地とでは、どこが違うのか。

国連軍地位協定には「日本国で公用のため調達する資材、需品、備品及び役務は日本の次の租税を免除される」(第14条の3)とあり、燃料などにかかる税金が免除される。在日米軍の物品には関税がかかっていないので、寄港した英軍の艦艇は無税の燃料を入れることができる。