一方、自衛隊基地を利用した場合は税金込みの価格となる。

だが、英国の空母打撃群が米軍基地を利用したのは費用節約のためだろうか。海上自衛隊幹部は「一義的には岸壁の空き具合で寄港先を使い分ける」といい、米軍と海上自衛隊の基地を見回して、空きスペースを利用した結果だろうというのだ。

空母打撃群は欧州連合(EU)離脱後の英国の存在を誇示する「グローバル・ブリテン(世界の英国)」を掲げ、航行を続けている。節約優先などというケチな真似はしないのかもしれない。

米軍横須賀基地に寄港した英空母「クイーン・エリザベス」
写真=英海軍のホームページより
米軍横須賀基地に寄港した英空母「クイーン・エリザベス」

不可侵とされる米軍基地に置かれている朝鮮国連軍の基地

ところで、日本に朝鮮国連軍の基地があることをどれほどの人が知っているだろうか。その役割、任務、活動については、日米地位協定によって不可侵とされる米軍基地に置かれているだけに、ごく一部の政府関係者以外、その実態を知る人はいない。

2006年3月、当時民主党の白眞勲参院議員が「国連軍地位協定の今日的意味」「国連軍基地が国内に存在する意味」「国連軍の航空機や艦艇が基地を利用する目的」などについて、政府見解を求める質問主意書を参院議長に提出した。

小泉純一郎内閣は同月31日付で「国連軍は抑止力として重要な役割を果たしており、国連軍地位協定は現在も意義がある」「在日米軍基地に国連軍の航空機や艦艇が出入りしていることは承知している」との答弁書を閣議決定したが、質問にはまともに答えていない。「出入りしていることは承知している」では、まるでひとごとだ。

今回の空母打撃群の来日に関連して、筆者が外国軍による国連軍基地の利用は年間、何件あるのか外務省日米地位協定室に問い合わせたところ「答えられない」と門前払いされた。担当者は「軍の行動が推測されるので公表できない」というのだ。

利用回数を公表したところで「軍の行動」が推測できるはずもないが、担当者は「言えない」の一点張りだ。

安倍政権の意向に沿う基地利用であれば公表した過去

実は2年前、日米地位協定室は以下の通り、直近5年間の利用実績を筆者に明らかにしている。

2013年12回(うち航空機7機、艦艇5隻)
2014年13回(12機、1隻)
2015年13回(11機、2隻)
2016年15回(14機、1隻)
2017年27回(13機、14隻)

2017年は艦艇が前年の1隻から14隻に増えている。理由を尋ねたが、当時、担当者は「基地の利用目的、いずれの国の航空機や艦艇か、どの基地を利用したのかは運用にかかわることなので答えられない」と回答を拒んだ。

今回の取材で情報公開の姿勢はさらに後退し、利用件数自体が非公表なのだから、日本にやってくる国連軍と称する他国軍の動向は知りようがない。

ただ、外務、防衛両省は2018年4月28日、北朝鮮が洋上で違法に物資を積み替える瀬取りを監視するため、オーストラリア軍とカナダ軍の哨戒機が国連地位協定を根拠に嘉手納基地を拠点にして警戒監視活動を行うと発表をした。国連軍の活動を発表したのは極めて異例だ。

北朝鮮に対して「圧力一辺倒」だった当時の安倍晋三政権の意向に沿う基地利用であれば、公表するということなのだろう。当初は非公表だった海上自衛隊のP3C哨戒機による瀬取りの監視活動も途中から公表に変え、5例を発表した。