一つは、リスク対応策の評価である。これは反省のための出発点だといえるかもしれない。今回のような感染症の拡大というリスクは予測されており、リスク対応の標準モデルもあったので、リスク対応のプログラムや基本方針を事前に決めていた企業が多かった。このような危機対応のプログラムが多くの企業で準備されていたために大混乱が防げたという側面もある。
国レベルのリスク管理を見ると、水際対策に漏れが出た段階でリスク管理は腰砕けになってしまったのではないかという印象を受ける。きっちりとした対応は継続されたのだが、報道が行われなくなっただけなのかもしれない。しかし、多くの国民は、感染が大きく広がり始めたら手の打ちようがないというあきらめの気持ちを抱いているのかもしれない。毒性が強い場合は、そんな悠長なことは言っておれないだろう。
今回のリスク対応で反省すべきことは何か
個々の企業レベルのリスクマネジメントに関しても、うまくいったというより、幸運に救われたといったほうがよいかもしれない。個々の企業レベルで深刻な問題が起こらなかったので、リスク対応プログラムに改善の必要性はないと判断してしまうのは危険である。今回のリスク対応で評価できること、反省すべきことる。今回はうまく対応できたが、より深刻な事態を考え、改善の余地があるものは何かを見つける必要がある。また、反省すべきこと、改善すべきことに関しては、プログラムの改善を考えなければならない。
第二のポイントは想定外の事態への準備である。リスクの多くは、事前に想定したようには起こらない。今回の想定外の事態は、ウイルスの毒性が比較的弱かったことである。事前に想定されていたのは、毒性の強いウイルスの蔓延である。だから今回の対応は、大げさにすぎたのではないかと感じている人もいる。
このような事態も含め、想定外のことが起こった場合の対応は適切だったかどうかを反省してみる必要がある。事前に想定したとおりの緊急事態が起こるのはまれである。事前に想定したようにならないのが緊急事態だと考えておいたほうがよいのかもしれない。