免税特区構想にうまみはない

東方経済フォーラムで発表された、日本の意向を無視する免税特区構想も、北方領土問題の最終決着を図る一環かもしれない。

ただし、地元のサハリン州では、プーチン大統領の構想は必ずしも歓迎一色ではない。

プーチン大統領は演説で、内外の北方領土進出企業への10年間免税特典を「前例のない優遇だ」としながら、「これには例外措置がある。高級海産物の漁獲や鉱物資源掘削、仲介業など利益が見込まれる業種には適用しない」と述べた。免税の対象は水産加工や観光、製造業のようだが、これらは初期投資が膨大で、免税によるメリットは少ない。当初20年間とされた適用期間も10年間に短縮され、「タックス・ヘイブン(租税回避地)ではない」という指摘も出ている。

投資呼びかけにも進出する外国企業はゼロ

ワレリー・キスタノフ極東研究所日本研究センター長は、「この地域にはすでに『経済発展地域』が設定され、企業誘致に特典が用意されている2025年までのクリル社会経済発展計画も進行中だ。これらの計画とどんな整合性があるのか」と述べ、「島は本土から遠く、管理するのは困難だ」と指摘した。

7月末の東京五輪期間中に択捉島を訪れたミシュスチン首相
サハリン州の通信社サハリン・インフォ提供
7月末の東京五輪期間中に択捉島を訪れたミシュスチン首相

となれば、免税特区構想は、ロシア経済の不振による連邦予算逼迫を背景に、北方領土開発は民間主導で行うよう地元に求めたともとれる。

中国や韓国企業が投資環境の良くない4島に本格進出する可能性も少ない。実は、サハリン州政府は10年前から中国や韓国に水産加工分野への投資を呼び掛けているが、進出した企業はまだ1社もない。ナマコの養殖を持ち掛けられた中国の業者は「投資しても、法改正などで施設ごとロシアに取り上げられる恐れがある。カネをドブに捨てるようなものだ」と日本のメディアに語っている。(共同通信、2011年3月10日)

北方領土開発に最もふさわしいのは、島に近く、離島開発経験が豊富で、高度の水産技術を持つ日本だ。日本抜きのロシアの開発構想は今後、曲折をたどりそうだ。

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