日本とのビザなし交流は「買い物ツアー」

島の開発が急ピッチで進む中、島民の日本への関心は徐々に低下している。日露間では1992年以降、日本人と島民がパスポートを持たずに訪問し合う「ビザなし交流」が毎年行われるが、昨年と今年は新型コロナ禍で中止された。

色丹島でアスファルト道路の工事が始まった
サハリン州の通信社サハリン・インフォ提供
色丹島でアスファルト道路の工事が始まった

「赤い灯台」(4月30日発行)は、ビザなし交流中止で択捉島民の声を拾った。

それによると、「日本人グループの訪問は夏の風物詩になっており、伝統が途絶えるのは残念」「12歳の娘が日本に行くのを楽しみにしており、娘を早く隣国の文化に触れさせたい」などと失望する一方で、「渡航中止を歓迎する。ロシアにはすばらしい場所がいくつもある。ロシア人は国内を旅行すればいい」「島民にとって、日本への旅行は買い物ツアーだ。日本側の負担で旅行するのは堕落につながる」といったビザなし交流反対論も紹介されている。

ビザなし交流は当初、相互理解を目的にし、討論会も行われたが、プーチン体制下でロシア側は領土問題の討議を拒否し、「買い物ツアー」になり始めた。来年で30年になるビザなし交流は新機軸を迫られている。

いよいよ領土問題の封印に乗り出したか

地元紙を読むと、ロシア側は日本に対して、4島領有は第2次世界大戦の結果という「歴史戦」を挑んでいるかに見える。

ロシアは昨年、事実上の対日戦勝記念日を従来の9月2日から、中国に合わせて9月3日に変更したが、国後、色丹、択捉3島ではその9月3日、戦勝76周年式典が実施された。平日にもかかわらず、行政府幹部や企業代表、軍部隊、学校の生徒らが参加。国後では1945年のソ連軍上陸を再現するイベントが海岸で行われ、択捉では花火が上がるなど祝賀行事が夜まで続いた。

「国境で」より引用
「国境で」(9月4日付)より引用

3島では、5月9日の対独戦勝記念式典も毎年実施されるが、対日戦勝記念日は島の存在意義にかかわる重要イベントだけに盛大なようだ。戦後も76年になるのに、大戦勝利を祝う記念碑が島の各地に設置された。島の学校では、軍事教練や愛国主義教育が盛んだ。

ロシア外務省は今年8月15日と9月3日、日本の返還要求を非難する異例の声明を発表しており、いよいよ領土問題の封印に乗り出したかに見える。