週刊誌の女性記者が直面する「セクハラ」と「性差別」

問題を掘り下げて行く前に、まず週刊誌の取材手法について解説したい。週刊誌は新聞やテレビと違い記者クラブに属しておらず番記者制度もない。記者クラブであれば会見やブリーフィングといった機会に情報を得ることができ、番記者であれば政治家や官僚と親密になり情報を得ることができる。

だが週刊誌は黙っているだけでは情報が入ってこないので、知り合いに声をかけては会合や会食を通じて情報交換する、という形でネタ探しをする。筆者も週刊誌記者時代そうだったが、情報を持っていそうな人を探してはとりあえずお茶か会食に誘うことを日課としていた。

Bさんはまだ入社数年の若手記者だった。ZAITENによると情報交換の場だったはずの席で、A氏はBさんに対してさまざまなセクハラをしていた。記者メモはその口止め料的に提供されたものだったようだ。

週刊誌の女性記者にとっては「セクハラ」と「性差別」は切っても切れない関係にある。

筆者がそれを強く認識するようになったのは、ある取材でXさんという元週刊誌記者(現・ライター)にインタビューしてからだ。インタビューのテーマは「記者の仕事術」だったのだが、話を聞いていくと、敏腕記者として知られたXさんが「週刊誌記者をスタートした時からセクハラと性差別に悩んでいた」という苦悩を告白しはじめた。

「仕事相手の男性7~8割に口説かれる」

週刊誌記者は個人主義の人間が多い。このため取材手法などを共有する機会は少ない。筆者が男性記者ということもあってか、これまで女性記者の隠れた苦悩を聞くという機会がまったくなく、だからこそXさんの告白はより衝撃的なものに感じた。

週刊誌の世界には「ネタを取ってきた人間がいちばん偉い」という文化がある。このため序列を決めるのは、経験年数ではなく、どれだけ情報を取っているかだ。例え若い記者であっても、ネタ次第ではトップ記事を張れる。年功序列に囚われない競争社会であることがスクープを生む原動力になっている。

一方で競争社会の弊害もあるのだ。Xさんはこう語る。

「1年目のときは自信もない、人脈もない、何もないわけです。周りを見ると海千山千の凄い記者ばかり。ネタを取るためにはどうすればいいんだと、悩む。それであらゆる会合に顔を出す、ということをやるようになる訳です。女性記者の場合、男性記者や取材相手から口説かれるというのは日常茶飯事です。ある女性記者は『7~8割の男性は口説いてくるか、セクハラをしてくる』といっていました。でも仕事だから我慢をしなければいけない、と新人時代は考えてしまうのです」