菅首相の降板を促した横浜市長選
自民党総裁選、そして衆院選に向けて、政界は慌ただしくなっています。結果的に菅義偉首相は総裁選に出馬しないことになりましたが、この決定に至る前の段階から首相に対する疑問、批判が党内から相次いでいました。
このように大騒ぎとなったのは、自民党議員の中に次の衆院選で敗北するのではないかという危機感があるためです。過去の例を見ても、首相を引きずりおろす動きが出る、首相への批判が高まるのは、来る国政選挙で敗北するのではという見方が広まったときです。
もっとも、各社の世論調査を見ると内閣支持率は低下していますが、自民党自体の支持率は大きく低下しておらず、野党との差はまだ開いています。たとえば最新の日経新聞世論調査(8月27~29日)で自民党の支持率は39%、立憲民主党は11%でした。日経新聞の世論調査が強い自民党バイアス(自民党への支持等が過大に報告されること)を含むことを考慮しても、自民党は政権を維持できる支持の水準を保っていたと考えられます。
それでも自民党内で悲観論が広まったのは、最近の地方選で自民党の選挙結果が芳しくなかったためです。特に、8月22日に投開票された横浜市長選の結果は重く受け止められました。首相は横浜市内の選挙区選出であり、やはり横浜市内選出の小此木八郎衆院議員を市長候補として支援したにもかかわらず、立憲民主党が擁立し共産党が支援した山中竹春候補に大差で敗れたためです。
地元で首相が推した候補が敗れるという結果は衝撃的と受け止められ、新聞各紙も「首相の不人気、鮮明 盟友肩入れ、大打撃」(毎日新聞)、「小此木陣営 恨み節 地方議員「内閣不支持が敗因」」(読売新聞)と見出しで首相の「不人気」と関連付けました。
そして、「『菅首相のまま衆院選に臨めば、壊滅的結果になる』(若手)との見方が支配的になった」(『読売新聞』2021年9月3日夕刊)、「求心力の低下に拍車がかかった」(『朝日新聞』2021年9月4日朝刊)と、横浜市長選での大敗を首相退陣の重要な要因とする見方が広がっています。