肥満やメタボリックシンドロームのような生活習慣病を防ぐにはどうすればいいか。医学博士の金城実さんは「健康な体を保つには腸内環境の改善が重要。一日一食は、発酵食品が多く含まれた伝統的な日本食をとるのがいい」という――。

※本稿は、金城実、作間由美子『免疫は発酵食品でぐんぐんあがる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

テーブルの上の伝統的な和風の朝食
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/ahirao_photo)

悪玉菌を腸内からなくしてしまうのは逆効果

COVID‐19感染症の世界的流行にともない、人々の健康意識が高まる中、注目されている「発酵食品」。医師であり『免疫は発酵食品でぐんぐんあがる』(プレジデント社)の著者でもある金城実氏は発酵食品に注目しているという。とくに金城氏が期待しているのが「腸内環境の改善」という。

「私たちの腸のなかにはいろいろな細菌が住んでいます。みなさんも、ビフィズス菌とか、腸内善玉菌・悪玉菌とか、聞いたことがあるのではないでしょうか。腸のなかではいろいろな種類の菌が集まって存在しているのですが、その様子がお花畑(フローラ)のように見えることから『腸内フローラ』と呼ばれています。

腸内細菌については善玉・悪玉菌という名前から『カラダにいい働きをする善玉菌を増やして、悪さをする悪玉菌はやっつけたほうがいい』と思っている方も多いのですが、悪玉菌を腸内から一掃して、まったくなくしてしまうことは、むしろ私たちのカラダにとってよくありません。

重要なのは、悪玉菌と善玉菌のバランス。バランスのとれた腸内フローラを保つことによって腸の働きがよくなり、カラダに必要なたんぱく質・糖質・脂質やビタミン・ミネラルなどの栄養素が吸収されます」(金城氏)。

「腸内バランスがとれている」とは、どんな状態?

「バランスのとれた腸内フローラ」とは、どういう状態なのか。どの細菌がどれぐらいの割合で構成されているのか、ということについては、現在も研究が進められている。

ただし、多くの種類の腸内細菌が共生している(腸内細菌叢の多様性が高い)状態を保つことによって免疫力の向上、肥満やメタボ・生活習慣病の防止など健康増進につながる、ということは国内外の研究で明らかにされている。

自然環境問題におけるキーワードが「多様性」であるのと同じように腸内環境も「多様性」が重要なポイントであり、その多様性を高めるうえで心強い味方になってくれるのが、発酵食品なのだ。

今年7月12日、米国科学誌「Cell」に掲載されたスタンフォード大学のグループの研究では、発酵食品を多用する食事をとる人と、そうでない人の腸内フローラを調べたところ、前者では「腸内細菌叢の多様性が高まっている」ことが確認されたという。では、「発酵食品を多用した食事」とは、どのような食事なのだろうか。何を摂取すれば腸内環境の多様性を実現できるのか。