財政破綻危機を招いた「3つのツケ」

では、なぜいま、財政破綻なのか。

1点目は、コロナで予定外の歳出増と歳入減で財政が悪化している。ただ、京都だけでなく、全国の自治体が同様の事態に見舞われていることは言うまでもない。

2点目は、長年の過剰サービスで歳出超過が続いていた。それも市民が知らないまま、全国最高水準の福祉サービスを提供し、全国屈指の高給を職員に与えてきたのである。

3点目は、歳出超過を補うために、ありとあらゆる貯金を使い、揚げ句に借金の返済積立金(減債基金)をも使って無理やり決算を黒字化させてきた。

これらのツケがいよいよ表に出たわけだ。

「このままでは破綻する」と言いながら、京都市が新たに出した財政計画は、再建でなく延命する(令和7年の破綻を同15年まで延命)という笑えないものだった。人件費は1%カットにとどめ、市民サービスをカットして延命を実行するという。

京都市の財政が悪化したのはこの10年のことだが、14年にわたり市政のかじ取りをしてきたトップの責任が重いのは当然だ。だが、それ以上に、この期に及んでもなお破綻に向けたカウントダウンを止められないというところに、この問題の根深さがある。

日本一人が去る街・京都

もうひとつの課題は人口減少だ。2020年、京都市は人口が8982人減少し、人口増減数が全国ワースト1位となった。同時に社会増減もワースト1位である。ちなみに、増減率のワースト1は夕張市だ。つまり、京都市は「日本一たくさんの人が去っていく街」になったということだ。

府下との転入転出数の図表
図表=筆者作成

こちらは財政難とは違い、京都市の観光と密に関連している。

2015年、京都市は「2020年には4万室の客室が必要だ」という試算を発表し、門川大作京都市長は記者会見で「客室があと1万室足りない」と発言した。自治体のトップが供給不足を明確に表明したことに加え、当時すでに始まっていた東京オリンピック特需を見込んだホテル建設、民泊ブームがそれを後押しし、空前の「お宿バブル」が始まった。

2015年に施設数1228軒、客室数2万9786室だった宿泊施設は、以下のように右肩上がりで増え続け、たった5年間で客室数は倍増した。

2016年2043軒/3万3887室
2017年2866軒/3万8419室
2018年3614軒/4万6147室
2019年3993軒/5万3417室
2020年3783軒/5万6183室

京都市の積極的なホテル誘致は、自治体財産にも及び、元植柳小学校跡地はデュシタニ、元清水小学校跡地はNTT都市開発、元立誠小学校跡地はヒューリック、元白川小学校跡地は東急ホテルズ、中央市場敷地の一部もホテルに転用することを条件に容積率の緩和を行うなど、行政総出でホテル誘致に奔走した。

世界遺産の二条城前の民間マンション建設予定地にいたっては、京都市が強いホテル誘致の意向を示し、デベロッパーはマンション建設を諦めさせられるという事態にまで発展している。

結果、当初4万室の供給を掲げていた京都市だが、わずか2年足らずで目標を達成。政策目標がここまでみごとに行政の舵取りで成功するのも珍しいだろう。