誰も知らない社民党のロゴを使って「最後の一葉」

細かい芸は佐藤さんの作品の特徴の1つだ。まんがの中に、気づくか、気づかないかギリギリの「隠し味」の笑いをぶち込んでくる。例えば「最後のひとり」。四人いた社民党が分裂で福島瑞穂氏一人になるという展開を、オー・ヘンリーの「最後の一葉」のパロディーとして仕上げた。これだけでも秀逸なのだけど、佐藤さんはそこに、隠し味をしのばせる。「四つ葉のクローバー」を模した社民党のロゴをあしらい、4枚が1枚になるという展開にしたのだ。

最後のひとり
画像=佐藤正明『一笑両断』(東京新聞)より

社民党のロゴをどれだけの人が知っているのか。知っていても、まんがの中にロゴが使われたのに気づかなかった人も多いだろう。しかし、気づいた人は、うれしくなってしまう。

蛇足だが、社民党は結局、福島氏以外にもう1人が党にとどまることになり、今は「最後の二葉」でふんばっている。

どれだけ揚げ足を取っても、ほとんど炎上しない

佐藤さんが描く政治家の似顔絵は、本物よりも似ている。そんなはずはないのだけど、そんな気がする。それだけでなく、テーマによって筆致を変えてくる。劇画風の時もあるし、海外の話題をとりあげる時は、アメリカンコミックのようになっている。それにしても、佐藤さんの書くドナルド・トランプ氏は絶品だ。トランプ氏がホワイトハウスを去り、題材になる機会が減ったことを佐藤さんは悲しんでいるに違いない。

赤勝て白勝て
画像=佐藤正明『一笑両断』(東京新聞)より

佐藤さんのまんがを、政治家たちはどう受け止めているのだろうか。普通に考えれば腹立たしく思うことだろう。政治家たちもそれなりに一生懸命政治に取り組んでいるという自負はある。それを、けなされたり、揚げ足を取られたりするのだから。選挙区の有権者が佐藤さんのまんがを見たら、自分の票が減るのではないかと心配する政治家だっているだろう。

しかし、結論を言ってしまえば、その類いのクレームは、ほとんどない。佐藤さんの所に直接抗議が行くこともないようだし、東京新聞に電話が寄せられることも少ない。ネットで炎上することも、ほとんどない。