仕事で必要な「3種類の非認知能力」

このように、いくら認知能力が高くて優秀でも、社会では通用しないことは多々あります。仕事をする上では、学校の授業では教えてくれない3種類の非認知能力が特に必要だからです。

まず、学生時代は、試験など“自分の課題を解決すること”が求められていましたが、社会人になると“相手(お客さまやチーム)の課題を解決すること”が求められます。他人のために何かをするには、相手の問題を察したり、聞き出したりする共感力やコミュニケーション力、利他性などが必要です。

2つめは、協調性や忍耐力、回復力です。学生時代は仲のいい友達と過ごしていればよかったのですが、社会人になると上司やクライアントなど、苦手だったり気が合わなかったりする人たちともやっていかなければなりません。

3つめは、行動力、やり抜く力、責任感です。学生時代は勉強で知識をつけて試験で点を取るという“机上”での作業で評価されましたが、社会人は、知識を活用して結果を出す“行動”が求められます。

もちろん、仕事へのミスマッチから来るストレス原因は、どちらの能力不足でも起こり得るものです。単にその仕事に対する十分な認知能力(基本的能力)が欠けている場合もありますので、認知能力はある程度は必要です。ただ、ストレスに強くあるためには、認知能力を上回る非認知能力が必要なのです。非認知能力の高い人は、自分の知らなかった新しい世界の人々と交わっても、協調し、試行錯誤を繰り返し、転んでも立ち上がることができます。その姿勢こそが、ストレスに強いと言われるゆえんなのです。

ストレスに強い大人は「3つの感情」を体験してきた

このような話になると、必ず聞かれるのは、「子供時代に何をやらせたらいいのでしょうか?」という質問です。野球? サッカー? ピアノ? バイオリン? くもん? 体操? 夏休みや冬休みにはどのような経験をさせればいいでしょう? 云々です。

しかし、何かこれという特定のやるべきものはありません。それよりも、ストレスに強い大人たちは子供時代に必ず、大人の応援のもと、“3つの感情”を繰り返し体験してきていることを知ってほしいと思います。

その3つの感情とは、①物事に対し純粋に楽しい、気持ちいい、うれしいと感じる気持ち、②挫折や失敗による悔しさを、頑張って挑戦や試行錯誤して乗り越えた後でのやったー! という気持ちの高まりや達成感、③1人ではできなくても仲間との協力や共同作業などで乗り越えられる、という共同感情や一体感です。

手をつなぐ人たち
写真=iStock.com/sutlafk
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