優秀なのにチームプレーが全然できない新入社員

一方、学生時代などには優秀だったのに、社会に出て苦戦する人は、「認知能力の獲得のために、非認知能力を犠牲にしてきた」ことの影響も小さくないと考えています。

ある有名大卒の入社1年目の男性社員は、仕事の飲み込みや分析力は新卒とは思えないほど優れていましたが、チームプレーが苦手で融通が利きません。部内で同僚と協調できず、次第に誰も彼に仕事を教えなくなり、孤立しました。産業医面談で、精神面から来る体調不良を認めるものの、本人は最後まで“上司が悪い”という気持ちを変えることはできず、結局、退職していきました。

暗い部屋の中で悩んでいる人
写真=iStock.com/Tzido
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彼との産業医面談の中で、気になった点がありました。中高一貫校時代にIT関係の読書や調べ物、プログラミング等々、興味の対象に没頭する時間がもてたことが、彼の今の長所に影響していると思われる一方で、部活動経験がなく、大学でもサークル活動など年齢を超えて他人と交わる機会に恵まれなかったことです。それが、社会人になってから周囲との協調性がない、チームプレーができないことにつながっているようでした。

また、ほかの会社で中途採用された女性社員のケースでは、博士号を持っているためか、周囲をやや小ばかにする傾向がありました。博士号という学歴は高い認知能力ともいえますが、決して総合的人間力ではありません。彼女の場合、締め切り間近に起こったトラブルで誰にも助けを求められず、結果として大失敗してしまい、そこからうつによる休職となりました。

2人に共通する発言「自分のミスは自分で挽回すべき」

両者とも産業医面談では、このようなことを言っていました。「自分のミスは自分で挽回すべき、他人のミスまで気にしていられない」「自分の不勉強は自分で調べるから睡眠時間が少なくなってもしょうがない」(しかし翌朝起きられなくてチームにかかる迷惑には無言)。2人とも、認知能力は優秀でしたが、会社で求められる非認知能力は不足しているようでした。