学生時代に優秀だった人材がつぶれるケースは少なくない
9月の産業医面談では、社員さんたちと夏休みについての雑談をすることがあります。その中で、子供(学生)時代の夏休み等についての会話から、社員がどのようにストレスに強い大人へと育まれてきたのか、感じることがあります。
今回は、子供時代にどのような夏休みを過ごし、どのようなスキルを磨けば高いストレス耐性が身に付くのか、1万人以上の外資系エリートたちと面談してきた私の経験からお話しさせていただきます。
私の産業医クライアントには、いわゆる偏差値が高い有名大学から入社してくる社員が多くいます。日々、彼らと接する中で、学生時代に優秀だった人や、有名な会社から転職してきた人が、ストレスに悩み、心身ともに疲弊しつぶれてしまうというケースは決して少なくありません。一方、学生時代には目立った成績ではなかった人や、全く期待されていなかった中途採用者が、結果をしっかり出し、人望を集めて、どんどん昇進していくこともあります。
ストレスに強い人は「非認知能力」を育てられてきた
比較的ストレスに強い人に子供時代について聞いてみると、多くの人に「認知能力」だけでなく、「非認知能力」の面でも継続的に育まれてきたという共通点がありました。
認知能力とは、テストの点数や偏差値、IQ等、数字で測定可能で、従来の学校教育等で重点が置かれてきたものです。“ハードスキル”とも言われ、言われたことをやる、テストの過去問を解く、塾や予備校での学習、丸暗記などの時間効率がよい勉強によって得られやすい特徴があります。
一方、非認知能力は“ソフトスキル”とも言われるものです。数字だけでは測れない、“総合的人間力”を意味します。
勤勉性、外向性、協調性、精神的安定性などが代表的ですが、このほかに、まじめさ、好奇心、社交性、利他性、自己肯定感、責任感、想像力、やり抜く力、自主性、積極性、コミュニケーション力、共感力、柔軟性、忍耐力などさまざまなものがあります。
なぜ“総合的”と呼ぶかというと、例えば、回復力(レジリエンシー)に優れる人がいたとして、その人は回復力に優れるという一点だけで、メンタルヘルス不調になりにくいのではありません。
そのような人は多くの場合、職場で日ごろから上手にコミュニケーションを行っています。また、分からないことを人に聞く素直さや謙虚さ、また、周囲を巻き込む行動力、そして自身の試行錯誤ややり抜く力など、さまざまな要素を持っています。そのため、そもそも回復力をそこまで要さない、仮に回復力を要する事態があったとしても周囲がサポートしやすい人なのです。非認知能力とは、このように複合的なものです。