加害者の巧妙な手口
新聞やテレビで報じられるSNSを使った性犯罪はあくまで氷山の一角である。SNSの普及によって、被害者にならないまでも、親の知らぬ間に際どいところを歩いている児童は少なくない。
なぜ被害者たちは見ず知らずの他人と接触し、「自撮り」の画像を送ってしまうのか 。
NPO法人「ぱっぷす」の相談窓口には、累計約1200件の相談の内1~2割ほど児童ポルノに関する相談が寄せられている。相談員の後藤稚菜(わかな)氏によると、中高生が被害に遭うのは次のようなパターンが多いという。
「オンラインゲームやコミュニティサイトなどのSNSで知り合った相手から、最初は普通のやりとりをしながらだんだん親密になっていく。そのうち相手が『どんな制服なの?』などと画像を要求するようになります」
いきなり裸の写真を求めるケースも中にはあるが加害者たちは、写真を要求するまでに、SNSで児童とコミュニケーションを重ね、信頼関係を構築しているケースが多い。時に同性の友人になりすまし、また時には恋人候補のように振る舞い児童を錯覚させる。こうして「相手も信頼できると思っていたから」「自分も相手を気になっていたし、応じていた」と写真を送ってしまう。
だが、要求は一度では終わらない。これが始まりなのだ。彼らは「下着の画像を送ってよ」「胸の画像だけでいいから」と少しずつ過激になっていくのである。ここで断ると、加害者は次のように言う。
「俺のこと信用できないの?」
「好きなんだったらそのくらいしてくれるよね」
「他の子は送ってくれたのに、なんで君はできないの」
児童はこう言われ「断る自分がおかしいんじゃないか」「断るのは悪いんじゃないか」と思わされてしまうのだ。罪悪感を抱き、渋々写真を送る児童は少なくない。
児童の心理を操る加害者
「SNSでのやりとりで相手は児童の個人情報をある程度聞き出し、被害者の学校などを把握している場合もある。そのうえ画像も手に入れたとなると、加害者の要求はエスカレートし、児童を脅すようになります」(後藤氏)
「写真を拡散されたくなかったら、自慰行為の動画を送れ」
「君の学校の人にこの写真を送られたくなかったら、裸の写真を送って」
この段階までくると、友人関係もしくは擬似的な恋愛気分は消え失せている。拡散を恐れながら、要求に応じざるを得なくなってしまうのだ。
後藤氏によれば、加害者が被害者を脅すために、被害者本人になりすます手口もあるそうだ。
「被害者の名前でSNSアカウントを作ります。被害者が送ってきた裸の画像にモザイク処理を施したものを用意し、あたかも被害者が自分でさらしているかのような投稿を行う。続いて、『DMをくれた方にはモザイクを外した写真を送ります』といった投稿をするんです。多くの被害者は強い恐怖を感じ、拡散をやめさせるために相手の要求に応えるしかなくなってしまう」(同)