一方の長尾先生はテレビ番組で、保健所による「治療ネグレクト」が1週間続いた後に苦しくなったため受診された患者さんの様子を紹介していました。公共交通機関を使うなと言われたため長時間歩き続けたとのことです。ここまでくると虐待です。普通に受診して治療に入ればいいだけのことです。
私の回復された患者さんも電話でこうおっしゃっていました。
「保健所の電話なんて通じないわよ。自宅療養の物品なんてとどきやしない。具合悪くなったら連絡して、の数日前のメールが最後よ。先生の薬がなかったら、熱も咳があっても放置されていたんじゃないの?」
彼女の場合、日本には世界一多くのCT検査装置があるのに撮影できないことも問題でした。
対応は放棄されています。「東京のコロナ 制御不能、自分の身は自分で守る段階」とウイルス感染は自己責任にしました(注12)。8月14日には濃厚接触者追跡も放棄しました(注13)。
やれるに違いないと自分の能力を思い上がってやり始め、やれなくなったら責任も取らず放置というのはひどい話です。もともと人間は、どの国でもこういった感冒系ウイルスを管理できなかったのです。ウイルスが広まることを自然のものとして受け止め、対応策を構築すれば済んでしまう話です。
観測された現在からの未来
「コロナは、通常のかぜと見分けがつきません。カゼ症状がでたら近くの先生を受診して検査してみましょう。コロナやインフルが陽性ならそれぞれの初期治療しましょう。悪化しなければOK。必要に応じて先生の指示でCTなどを行いましょう。コロナの場合ステロイドやカクテル抗体治療を点滴することで良くなる人もいらっしゃいます。それでも具合悪くなってしまった人は、病院で治療します――」
こういう風景になっていくことでしょう。「人によって悪化する病気のひとつ」として治療を受けていけばいいだけです。今では全例保健所連絡で家庭医から切り離されてしまっています。ナンセンスです。