マグネシウムを摂取することで脳卒中を予防できる
塩分の打ち消す栄養素の話をしましたが、マグネシウムも塩分を体外に排出させる作用を持っています。
このことは30年前に行った脳卒中ラットの実験ですでにわかっていることです。脳卒中ラットに塩分1%(味噌汁程度)の水を与えるとたった2カ月ほどで脳卒中を起こします。
ところが塩分入りの水を与えても、一緒に十分な量のマグネシウムを与えることで、脳卒中の発症を遅らせることができ、寿命が2倍に延びたのです。それから30年後、ついに人間でもこのことが証明されました。
血圧が高めの人を集め、毎日600ミリグラムのマグネシウムを摂ってもらったところ、12週間もすると血圧が下がることが確かめられ、血中のマグネシウム量も増えたと報告されました。血圧を上げないための仕組みである「ナトリウムポンプ」の話をしましたが、このとき、ナトリウムポンプの働きを助けてくれるのがマグネシウムです。
ナトリウムポンプを動かすATPアーゼという酵素は、マグネシウムと結合することで初めて働くのです。つまり、マグネシウムがないと、ATPアーゼを使って塩分(ナトリウム)を細胞から追い出すことができないのです。塩の摂りすぎになりがちな現代人こそ、マグネシウムをしっかり摂取すべきなのです。
大豆を食べることで肥満と糖尿病を予防できる
ところが日本人のマグネシウム摂取量は激減してきています。マグネシウムは大豆のほか、玄米や麦に多く含まれています。しかし精白した白米では、マグネシウムの含量は6分の1にまで低下してしまいます。
またマグネシウムはわかめやひじき、干しエビやするめなどの乾物、野菜やきのこにも含まれていますが、これらも現代の日本人の食生活では不足しがちです。その不足しがちなマグネシウムが大豆、そして魚にたっぷり含まれているのです。
今、日本では糖尿病がひじょうに増えています。厚労省の調査では糖尿病患者は1000万人、将来的に糖尿病になる可能性が高い「予備軍」がさらに1000万人いるとされています。もはや国民病といっていいでしょう。
糖尿病はご存じの通り、血液中の糖(血糖値)が慢性的に高くなる病気です。血糖値が高い状態が続くことで、血管がダメージを受け、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症も起こりやすくなってしまいます。
ところが大豆を摂ることで血糖値を抑え、糖尿病を予防することができるのです。兵庫県で50代の人に対して行った調査ですが、納豆を1日1パック以上食べる人は、1パック以下の人と比べて血糖値が正常な人が多いことがわかりました。
大豆をあまり食べない人は食べる人に比べて血糖値が高い人が3倍以上もいます。また大豆には肥満防止の効果もあります。図表1はマグネシウムと肥満の関係を調べたものです。世界の人をマグネシウムの摂取量を多い人から少ない人まで5分割し、肥満との関係を見ています。
マグネシウムをたくさん摂っている人は肥満が少ないことがわかります。またマグネシウムの摂取量の多い人は高血圧、高脂血症が少ないこともわかっています。