未知を恐れるのは本能、不安は「具体的な情報」で埋める

とはいえ、「未知」の物事を恐れるのは人間の本能です。私自身は医師として、そして親の立場からも世代を問わずワクチンを接種してほしいと願っていますが、「mRNAって何?」「5年後、10年後に何か起こりそう」と考えてしまう気持ちもわかります。

その本能的な不安をなだめ、冷静に自分の利益になる行動を起こすには、不安をかき立てる相手を「知る」ことが必要です。

新型コロナウイルスに感染すると、どんな経過をたどるのか、どんな後遺症をもたらし、症状がいつまで続くのか──。ワクチンについても同じです。感染・発症・重症化予防効果や、副反応とその頻度、対応方法、妊娠を希望している女性や子供への接種は安全なのか、どんな影響があるのか、など自分自身が抱えている「不安」を具体的な事実で埋めていきましょう。その過程のなかで「感染vs.ワクチン接種」のメリットとデメリットを比べ、冷静に最善の行動をとろうとする気持ちが生まれてきます。

ところが、ここにも落とし穴があります。それがインターネットやSNSに氾濫する「フェイク・ニュース」です。

スマートフォンを操作する女性の手元
写真=iStock.com/west
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誤った情報が「善意」で拡散されることもある

フェイク・ニュースといっても、悪意があるデマや、パンデミックに乗じて集客と広告収入を狙った金銭目的のものばかりとは限りません。なかには「善意」から拡散される誤った情報もあります。

もし、同じワクチン不安を共有する「ママ友」が「こんな情報があるんだよ」と勧めてきたとしたら? たとえ真偽がわからない情報だとしても、ばくぜんとした不安であれこれ迷い苦しむ必要がなくなるなら……と、つい飛びついてしまうかもしれませんね。ネット上にはびこるフェイク・ニュースは不安につけ込んできます。

特にSNSでは、自分と興味や関心が似た人が同じような情報・意見を繰り返しリツイートすることで、真偽を検証されることなく、誤った情報が「真実」かのように拡がる「エコーチェンバー現象」が生じます。たった一人が発信したフェイク・ニュースが、無批判に拡散されることで、いつのまにか「みんなが知っている事実」として一人歩きしていくのです。当然、新しい事実が判明しても、情報が修正されたり、更新されることはありません。