日テレの良心を感じさせるコンテンツ
残りの1パターンは「チャリティー番組とはいえ、新しく面白くしよう」と挑んだ人々。私が面白いと思ったコンテンツは、「EXIT 世界変えたいこと会議」と「黒柳徹子 芸能界の未来を担う30人特別授業」。
変えたいと思うことがある10代を集めて、芸人のEXITと共に語らせるコンテンツはかなり見応えのある中身だった。もちろん「自分の言葉と哲学をもつ、選ばれし10代」であるからこそ成り立った「意識の高い」企画ではあるが、24時間テレビが考えるべき議題について闊達な意見が次から次へと飛び出していたように思う。
また、黒柳徹子は若き芸能人が「自らの意志でSDGsなどの問題に取り組もうとすると揶揄される」と相談したところ、「ブレずに続けていくこと」と回答。チャリティー番組への参加にも通ずるところがあるな。いずれも録画で、かなり短めに編集されていた。おそらく制作側が若いのだろうと察する。若手は長尺をやらせてもらえなかったのかもしれない。
弱き立場の人をやたらと励まし、何かをやらせて感動を求めるよりも、「仕組みとして、思想として、これからどうしたらいいのか」を考える人を増やす。そんな趣旨のコンテンツだったと思う。
ただただ長いものに巻かれているだけではない、日テレの良心のかけらを見た気がする。目に見えるものは阿漕に根こそぎ収穫するのを目的とするのではなく、今から種をまく人たちが日テレの中に確実にいるのだと思った。
24時間テレビは誰を救うのか
「24時間テレビ」は当初、障がい者や闘病する人、国や行政の福祉政策だけでは手が回らず、日常で困っている人のために制作される善意の番組だった。福祉車両など高価なものは予算と折衝が必要な行政ではまかなえない。「24時間テレビ」が今までに寄贈したかなりの数の福祉車両が全国で役立っていると思うと、募金も有意義だ。
ところが、天災が次々と起こり、被災地復興支援の色合いもかなり強くなった。多様性を求められる現代においては、さらに「弱い立場の人」「困っている人」はどんどん増えている。しかもコロナ禍で生活もままならない人が増えた。
それもあって、今回の「24時間テレビ」内のドラマのテーマは「子供の貧困」。
生活保護を受けている家庭や貧困家庭で育ち、“困った生徒”と呼ばれているが、本当は“困っている子供たち”にクローズアップ。熱血新人教師(平野紫耀と浜辺美波)が生徒たちの事情に向き合い、心を支えていくという物語だ。
正直、学校や教師にこれ以上負担とプレッシャーをかけないで、と思う内容でもあったが、生徒のひとり(道枝駿佑)のセリフにはキーワードが込められていた。
「俺らみたいな底辺には権利がないんだよ。明日を考える権利、将来を選ぶ権利、自分で行動する権利。なんもない。全部あきらめるしかない」
こうした声を出せない、福祉や支援の網からこぼれおちてしまう人々をどう救うか。お金さえ集めればいいという問題ではなく、支援の仕組みも構築する活動につなげていくことはできんもんかのう。今後も「24時間テレビ」を続けるとすれば、誰をどう救うか、そのあたりも課題になってくると思う。