家庭内のフリーライドが、家庭内にヒビを入れる

「フリーライド」という言葉があります。「タダ乗り」を意味します。利益は享受するが、そのために必要なコストは出さないことと定義されてます。

例えば、「自治会の掃除はいっさい手伝わないのに、お祭りはちゃっかり出る」「会社のみんなで購入している置き菓子を、お金を払ってないのに食べる」など、自分はペイはしないのに恩恵に与ろうとする行為をフリーライドと呼んだりします。

最近では、働き方にも使われます。長時間労働や仕事優先の働き方を社員に強いる「夫側の企業」は、「妻側の企業」にフリーライドをしているという使われ方をします。

例えば、保育園から子どもが発熱をしたと連絡があった場合、仕事を切り上げてお迎え行くのは誰でしょうか? 夫婦平等に振り分けて、お迎えに行っている家庭もあると思いますが、まだまだ日本の現状では妻側のお迎えが多いのです。となると、妻側の企業は常に「子持ちの女性社員は、子どもの体調不良になると抜けてしまう」ことを念頭に入れて、仕事のシフトや業務内容を組む必要が出てきます。逆に、夫側の企業は、急な社員の休みによる損失を伴うケースがほぼありません。そうすると、夫側の企業は、妻側の企業の人事制度や福利厚生にフリーライドしていることになります。

尾石晴『ワーママはるのライフシフト習慣術』(フォレスト出版)
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これを家庭内に置き換えると、夫婦どちらかが家事育児をずっと担って、本来やりたいキャリア形成や仕事ができないのは、相手側のリソースにフリーライドしていることになります。本来は親として、夫婦としてやるべき家事育児を、もう1人のパートナーに負担させているのです。

これが続くと、どうなるか? 相手側のキャリアはなかなか形成できませんし、パートナーとしての役割を家庭内で果たしていないことになります。

不満を感じたほうから見限られて離婚となったり(離婚は3組に1組の時代です)、子育てがひと段落ついて、これから夫婦2人と言うところで、「あなたのせいで、私はあきらめてばっかりだった」と、キャリア形成できなかったことをずっと不満に持たれてしまう可能性もあります。