富裕層の不動産投資家たちは、どんな物件に目をつけているのでしょうか。米国公認会計士で不動産コンサルタントでもある午堂登紀雄さんが最新の動向をリポートします――。
五輪は不動産にあまり影響しない
新型コロナウイルスの影響により1年延期された東京五輪。
それで五輪後の不動産市況はどうなるかという質問をよくいただくのですが、結論から言うと日本の不動産市況と五輪は特に関係ないと考えています。
オリンピックは、だから「家が欲しい」「家がいらない」という動機にはならないからです。
確かに選手村を改装して分譲されるマンション「晴海フラッグ」は人気のようですが、臨海エリアはともかく市場全体を動かすほどのインパクトはないでしょう。
では富裕層(金融資産数億円、年収2000万~5000万円程度:これは彼らの事業規模や購買パターンによる推定です)は、今後どのような投資物件を狙っていくのか。私はSNSで多くの不動産投資家や各地の地元大家の会の主催者とつながっていることもあり、情報収集してみました。
私の周囲には積極取得派、売買等による資産の組み換え派、慎重見極め派、他の投資対象に分散派など動きは様々でありますが、彼らの動きの一端をご紹介します。
キャッシュリッチだが鈍る取得スピード
誰も大っぴらには言いませんが、コロナ緊急対策支援融資を受け、焼け太り状態になっている投資家が多いようです。
資金的には困っておらず使うアテはなくても、とりあえず借りておこうという投資家は多数いて、ゆえに手元資金には余裕があります。
ここ数年は1棟アパート・1棟マンションへの融資は厳しくなっていたものの、今年の春ごろより金融機関の融資姿勢が積極的になっており、余った自己資金を活かせるため取得意欲は依然として強いものがあります。
しかし都市部の不動産価格は相変わらず高止まりしており、利回りも低い。そのため富裕層の資産拡大スピードは全般的に鈍っている印象です。
不動産市場を主戦場にしている富裕層にとっては、「高値掴みはしない」は鉄則だからです。