「競い合わせる教育」が高い労働スキルを育てる
13世紀のモンゴルの侵略者からソビエト連邦までの歴史を通じて、ハンガリーが周囲の大国に翻弄されてきたという感覚が、「競争の精神」を形作ってきたという見方もできます。
ハンガリーが国としてのまとまりに苦労するなか、国民は、自分の選んだ分野で卓越し、科学からスポーツまで、様々な分野で世界をリードする活躍を見せてきたのです。
この国の子育てでは、親は幼い頃から子どもを、ごく小さなことで競い合わせています。そして大人になると、ビジネスの世界でもそうです。頭脳流出と人材の不足を理由に、競争が生活の一部となります。ハンガリー企業の半数以上が「空きを埋めるのが難しい」と報告していますが、これはつまり、スキルの高い労働者の競争が激しいということです。
ハンガリーはヨーロッパのなかで、最も大きくも豊かでもなく、影響力の大きな国でもありませんが、歴史的に科学、技術、スポーツの大国であることを誇りに思っています。人口と資本の不足を、競争によって補っているのです。
私たちは、競争力が持つパワーを十分に理解するべきです。チャンスを得る人とそうでない人の違いを生むのは、結局のところ何でしょうか?
才能かもしれませんし、運かもしれません。
でも多くの場合は、持って生まれた競争力が、その人を勤勉な労働者へと育てあげ、チャンスを引き寄せてくれるのです。
欲しいもののために戦うことを学びましょう。人生で確実なのは、一番でゴールすれば勝てるということなのですから。
スポーツ庁長官・室伏広治と因縁のアスリートも
現在、日本のスポーツ庁長官は、陸上競技ハンマー投げ選手だった室伏広治さんです。
彼が金メダルを獲得した2004年アテネオリンピックで、最後まで記録を競ったアドリアン・アヌシュ選手を覚えている日本人も多いでしょう。あのアヌシュ選手もハンガリー代表です。
ドーピング疑惑などもあり後味の悪さも残りましたが、それでもハンガリーの人々は「競争する」ことに関して地球上のどの国よりも必死なのです。
また、ハンガリーには日本と同じく温泉がたくさんあり、首都ブダペストは「温泉都市」ともいわれています。近現代のさまざまなシーンで、日本とクロスすることがあるこの国を、いつか訪れてみるのもよいのではないでしょうか。