ビーチハンドボールはビキニ拒否で罰金

一方、東京五輪ではないが、2021年7月上旬に開かれた女子ビーチハンドボール(五輪種目ではない)のヨーロッパ選手権でノルウェーがビキニパンツを拒否して、短パンを着用したことが波紋を広げた。

国際ハンドボール連盟のユニフォーム規定に違反したため、1500ユーロ(約19万円)の罰金を科された。同連盟の規定では、男子ビーチハンドボールの選手は「膝上10cmの短パン」なのに対して、女子選手は「ビキニの側面の幅は最長で4インチ(約10cm)まで」「脚の付け根に向かって切り込んだ形のぴったりとしたビキニパンツ」を着用しなければならない。

しかし、ビキニパンツ着用のルールを疑問視する人は多く、このニュースが伝えられるとさまざまな批判が起きた。抗議の意味を込めて、罰金を肩代わりするチームや選手と関係のないアーティストまで現れたのだ。

男女でウエアの規定に大きな差があるのは不自然と言わざるをえない。なぜ、こんなことになったのか。ビーチハンドボールは国内でほとんど知られていないため、ビーチバレーに置き換えると理解できるかもしれない(ビーチバレーは2012年以降ビキニが強制ではなくなった)。

ビーチバレーの試合中
写真=iStock.com/technotr
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日本で女子のビーチバレーが注目されたのは浅尾美和に代表されるように、ウエアを含めたビジュアル面が大きい。連盟としてはまだまだマイナーな種目であるビーチハンドボールを盛り上げたいという狙いがあったと推測できる。

もっと端的に言えば、男性視聴者にアピールすることで競技への関心を高め、その結果、スポンサーやテレビの放映権料を獲得したいといった狙いが透けて見える。歴史的にみれば、スポーツのユニフォームはこうした商業的な背景を反映しているケースが少なくない。

「性を強調」するユニフォームのドレスコードは変わる可能性も

ただし、「性を強調」するユニフォームのドレスコードは今後、変わる可能性もある。

ノルウェーの女子選手たちは大会前に男子と同じような短パンを履きたいという要望を連盟に提出したところ、「罰金」もしくは「失格」の可能性を伝えられたという。それでも選手たちは、短パンで強行出場した。その結果、失格ではなく、罰金で済んだことは今後の変化を期待できるといえるかもしれない。SNSなどで世論を味方につけたことも大きい。

スポーツ界の「罰金」で思い出されるのが、「バスケの神様」と呼ばれた元NBAのスター選手マイケル・ジョーダンだ。現在でも絶大な人気を誇る「エアジョーダン」というシューズは“規約違反”から熱視線を集めて、大人気モデルへと発展した歴史がある。

当時のNBAは規定で白以外のシューズは認められていなかった。しかし、ナイキはジョーダンに所属チームのカラーである「赤と黒」のデザインを提供。履いた場合は毎試合5000ドルの罰金が課せられることになっていたが、それをナイキが払い続けたという逸話がある。

これが抜群のプロモーション効果を生み、マイケル・ジョーダンとエアジョーダンは“神”のような存在になった。さらにその後、NBAでは白以外のシューズも認められるようになったのだ。