アスリートたちは動きやすさでウエアを選んでいる
話を東京五輪に戻そう。7月30日からはオリンピックの花形種目である陸上競技が始まった。トラックを疾走する女性スプリンターや、フィールドを舞う女性ジャンパーたちの大半は上下が分かれたセパレート型のユニフォーム(腹部が肌露出)を着ている。それは日本人選手も同様だ。
日本代表のユニフォームはアシックスが提供しているが、上下とも複数パターンが用意されており、何を着用するかは選手が自分で選べるようになっている。肌の露出が気になる選手は、一般的なランニングシャツ+ランニングパンツでもOKだ。
しかし、セパレート型のユニフォームを選ぶ選手が多いのは「動きやすさ」を最優先に考えているからだ。アシックスの担当者も、「選手は着やすくて、動きやすいウエアを求めています」と話す。とりわけ0.1秒、0.01秒単位でメダル争いをしている短距離用のユニフォームは「すべての動作の負荷を軽減する」ように設計されており、動きのパターンに応じた工夫が細部に施されている。
各国の選手を見ても、セパレート型のユニフォームが多いだけでなく、丈が極端に短いパンツを履いている選手もたくさんいる。その理由は、短距離やハードル、跳躍の選手はダイナミックな動きをするため、脚の付け根部分の生地がだぶつくのを極力回避したいということである。だぶつき感があるとそれがストレスになってパフォーマンスに少なからず影響を与えると訴える選手は多い。
そして、もうひとつ大きな理由がある。単純明快、トップ選手が着ているから、他の選手もそれにならっているのだ。国内の主要大会でも女子選手のユニフォームはセパレート型が主流になっている。一般的なランシャツ+ランパンはデザイン的にも古臭く時代遅れという感覚が選手たちの中にはあるのだろう。
露出少なめのスーパーヒロインが登場すれば、そのスタイルがはやる
一方で男子マラソンではランシャツ+タイツ(膝上あたりまでのハーフタイプ)という組み合わせが急増している。世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が好んで着用しているスタイルだ。日本人では大迫傑(Nike)が同じスタイルでシカゴと東京で日本記録(当時)を樹立。国内トップ選手もまねる選手が続出しており、3月のびわ湖毎日マラソンでもランシャツ+タイツの鈴木健吾(富士通)が日本新記録の快走を見せている。
とはいえ、現状は陸上女子のユニフォームは全体的に露出の多いセパレート型が主流だが、全身タイツ型ののウエアを着る女子のスーパーヒロインが登場すれば、そういうスタイルがはやり、人々に認知にされる可能性もある。