7月4日に行われた東京都議選を、多くのメディアは「予想外の結果」と報じた。なぜ事前の当落予想は外れたのか。政治学者の菅原琢氏は「予想外の出来事が起きたのではなく、予想そのものに欠陥がある」という――。
都議選で当選確実となり、万歳する東京都の地域政党「都民ファーストの会」の荒木千陽陣営
写真=時事通信フォト
都議選で当選確実となり、万歳する東京都の地域政党「都民ファーストの会」の荒木千陽陣営=2021年7月4日、東京都中野区

「都民ファーストが終盤に追い上げた」は本当か

7月4日に開票された東京都議選はメディアや政界で「予想外の結果」と受け止められました。

大幅に議席を減らすと思われていた小池百合子東京都知事率いる都政与党・都民ファーストの会が想定以上に多くの議席を死守し、公明党と合わせて過半数を獲得するはずだった自民党の議席が伸びなかった、というのがメディアや政界に一致した「予想外」の内容です。

自民失速・都民ファースト伸長という「予想外」が生じた理由としては、「過労で入院した小池都知事への同情票が選挙終盤に動いたからだ」、「ワクチン不足が露呈し政権への批判が高まったからだ」などといろいろ指摘されているようです。理由はなんであれ、有権者の投票行動が事前の予想から急変したことが「予想外」を生んだというわけです。

本稿でこの有権者の態度急変説を全否定するつもりはないのですが、その前に「予想」がそもそも間違っていたことが「予想外」の実体ではと考えています。問題なのは有権者の側ではなく予想を外した側なのでは? というわけです。

予想と結果がズレたとき、予想者は予想の時点から結果までの間に何か大きな変化が起きたのだと言い訳をしがちですが、まず疑うべきは予想自体の失敗です。都民ファーストが終盤に急に「追い上げた」のではなく、投票者の行動を適切に予想できなかったことが予想者の主要な敗因と考えられるのです。