大きく予想を外した毎日新聞のインターネット情勢調査
そもそも、都民全体の投票予定割合と、選挙結果の予想とはだいぶ性質の異なるものです。本来選挙結果は、選挙区ごとにどの党の候補が当選し、落選するのかの予想を積み上げて予測されるべきものです。
今回、選挙区ごとに情勢を調査したマス・メディアは毎日新聞のみでした。同紙が示した「推定当選者数」は、都民ファーストが5~22議席、自民党が43~55議席でした。実際の結果は都民ファースト31議席、自民党33議席ですから、信じられないくらい大きく外しています。たとえば1998年参院選のように、過去に新聞の結果予想が外れた日本の国政選挙はいくつかありますが、ここまで酷い例は知りません。
同紙の予想が大外れした背景は、まずその調査の方法に求めることができます。通常、国政選挙での情勢調査は普段の世論調査と同様に電話で調査を行います。しかし毎日新聞は今回、NTTドコモのdポイントクラブ会員に対するインターネット調査を情勢調査に用いました。
インターネット調査は安価に、短時間のうちに、大量のアンケート調査を行うことができます。同紙調査では2万1000人の回答が集まったとしています。しかし、代表性を欠くことから、インターネット調査を定期の世論調査に用いているマス・メディアは日本にはありません。その方法の詳細は明らかではないですが、毎日新聞のネット情勢調査も一般的なインターネット調査同様に回答率(送付メール数に対する回収数)は低いものと思われます。
ただし、同紙とJNN、FNNが投票日当日に共同で行った同様の手法を用いた投票後調査(言わば、出口調査を代替した調査)では、結果をある程度正確に予測できていたようです。したがって、毎日新聞の議席数予想が大きく外れた主因は調査手法ではなさそうです。
予想が外れたのは「態度未定層」を無視したから?
先の表には同紙のインターネット調査の投票予定の割合も示しています。自民党の投票予定割合が突出している点は他紙調査と同様です。投票予定の自民党÷都民ファーストは2倍近くなっており、議席予測も最低でも2倍近い差(43÷22)が生じるということになっています。投票予定の傾向が議席予測に素直に反映されているようです。
この数字の傾向から、毎日新聞の議席予測が大外れしたのは、態度未定層等を無視して告示直後の態度決定層の投票予定のみを基に予想したためと推測できます。つまり、先の告示直後の世論調査と同じ問題が影響したと考えられます。
国政選挙の情勢報道では、「激しく追い上げる」「独自の戦い」のような独特な表現を用いますが、この背後には得票率の予測があります。予測した得票率の差によって「安定した戦い」「先行」「ややリード」「競り合う」というように言葉を選択しているわけです。
このとき各候補の予測得票率は、世論調査の数字が歪んでいることを考慮して、予測式で変換したものを用います。既知の歪みをなるべく補正して投票日の得票率を予測することで、投票先決定者からの情報のみで予断することを避けているのです。
ただし、知る限り近年の毎日新聞の情勢報道では予測式を用いずに生の数字から判断しており、今回もそうであったと推測されます。言ってみれば、予想を半ば放棄しているのです。